VRMMOをカネの力で無双する 完結日:2013年11月10日 作者:鰤/牙 評価:★★★★☆ 4.2 ツワブキコンツェルンの御曹司、石蕗一朗は、すごいお金持ちである。 話数:全118話 ジャンル:VRゲーム 登場人物 主人公属性 主人公最強 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:VRMMO 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 チート 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
日頃より楽しく読ませて頂いております。何度も読み返しては新しい発見もあり、素晴らしいと思います。ですが、表題の31話の冒頭の部分でサインアウトではなくログアウトの表現が適切ではないかなと。最近はあまり更新されていないようですが、他の作品もとても面白いものが多いので、是非続きが読むことができたらと思っております。一ファンとして応援しております。
アイテム名の一つにまでワクワクするナロファンの世界。完璧を越えて緻密な構成。この作品の凄さは400文字じゃとても紹介しきれない。 とりわけ登場人物が素晴らしく魅力的。 自らを完璧と認める主人公は自然体過ぎてもはやナルシストですらないのだが、彼は自分を認める自然さで他者のことも認める。人類は自分だけで完結していると言いのける彼がしれっと「彼/彼女は友達だ」と言う様には本当に感動する。 そんな主人公を取り巻く人物もひとり残らず個性豊かで(中には無個性という個性を爆発させている者もいる)無駄なキャラクターはひとりもいない。 本作には多くのパロディが鏤められている。これでもかと豊富でありながら決して濫用に堕さない絶妙なパロディが売り(もちろんこれは無数にある売りの一つでしかない)の本作に倣い、ある映画のコピーを引用してレビューの締めとしたい。『カッコイイとは、こういうことさ。』
アイリスという少女がいる。ある究極生命体により運命を狂わされた少女だ。少女には夢があった。才能がなかった。金がなかった。コネがなかった。意地があった。御曹司には才能があった。金があった。コネがあった。己があった。御曹司と出会った少女は、当然、その運命を翻弄された。そして当たり前のことだが、少女と出会った御曹司は、少女によってその歩みを変えた。ああ、勘違いしてはいけない。本物の数奇者は何事も楽しめるものだ。御曹司は少女がいなくても楽しんだだろう。残念なことに少女がいただけだ。少女も出会ってしまっただけだ。マグロと一緒だ。少女は進まなければ死んでしまう。どの道、前に進んでいた。まあ、出会ってしまったものは仕方がない。少女には意地と多少の人を見る目がある。ならば何とかなるだろう。別に恋人というわけではないが、二人の行く先が気になるのは、ナンセンスだろうか。
主人公、石蕗一朗は何でもできる人間だ。巨大財閥の御曹司であり、多芸多才な天才。趣味も仕事も一流で、おまけに美男子。そんな彼が、ふとしたことからVRMMORPG“ナローファンタジーオンライン”をはじめる。このゲーム、課金要素があるのだが、当然彼は課金づくめ。運営の想定をはるかに凌駕した課金パワープレイをかましてのける。こんなやつ、普通の物語なら敵役と相場が決まっている。当然反感を持つプレイヤーも出る。軋轢も起こらないはずがない。だけどこの男、溢れるカネの力を使うことは躊躇わないくせに、それで相手の意思を曲げたりはしない。あくまで規則に則って、相手の土俵につきあって、その上でカネの力で無双する。そんな彼の姿は爽快であり、魅力的だ。これは、とあるVRMMORPG界に突然現れた人間台風の起こすトラブルの数々に、住民たちがてんやわんやになる様子を楽しむ物語である。
退屈に飽きたブルジョワ御曹司を描いた作品は、それだけなら決して珍しいものではありません。が、VRMMOと掛け合わせたという点で、本作は一つの個性を獲得したと言えましょう。とはいえ、VRMMOそれ自体は単なる舞台装置に過ぎません。本作のキモはやはり主人公のキャラクターです。大衆的な一般論や世俗のしがらみの類を「ナンセンス」の一言で切り捨て、独自の価値観に従ってゲームに興じる姿はどこか滑稽ながらも痛快です。「カネの力で無双」はあくまでその一端に過ぎません。その周囲を取り巻く人物も、ロールプレイ(なりきり)に熱を上げるメイドさんをはじめ、一癖も二癖もあるキャラクターばかり。それもただ癖があるだけでなく、血の通った人間としてしっかりと描写されており、大仰なわざとらしさを感じさせない所も好印象。ありきたりなVRMMOモノ、最強モノにはもう飽きた、という方は是非ご一読を。