第二次大戦で犠牲になったある親子をきっかけに、心に傷を持つ一人の青年と、体に傷を持つ一人の若き女性が運命的に出会い、様々な葛藤を持ちながらも、二人の人生を懸命に生き抜いていく社会派恋愛小説。
物語は昭和20年秋から始まる。長崎で被爆した愛子という女性が、壮絶なお産の末自分の命と引き替えにアメリカ人の子供を出産する。英子と名づけられたその子は胎児性白血病という病気を抱えながら、頭に髪の毛が生えぬまま育っていく。何とか大人になった英子が26才になった時、寿命があと一年だと医者から告知を受けると、幼い頃苛めにあった時に救われたキリスト教の布教をするため、熊本に行こうと決意する。熊本で布教をしていると、額に火傷の傷を持つ幼い少女、ミコに出会う。英子はミコから小学校で苛められている事を打ち明けられ、苛めに打ち勝つ方法を伝授する。そしてその時、英子は母愛子から託されていた父への手紙と、自分が父宛に書いた手紙を、ミコが大人になったら自分の代わりにアメリカの父に届けて欲しいとミコに託す。
十年程が過ぎ、大人になったミコは、すっかり忘れていた愛子と英子の手紙を、封を切り読んでしまう。手紙を読んだミコは、どうしてもその手紙を届けなければという使命感にかられ、アメリカ、ロサンジェルスに行く事を決意する。
一方、もう一人の主人公、現在新聞記者を生業としている誠介は、次期首相と目されている代議士、犀惟政が愛人に産ませた子供だった。父に反発し家を出ていた誠介は、父が収賄に手を染めている事を知る。誠介は父の背信を、父が首相に就任する前までに何としても暴きたいと奔走するが、結局アメリカのロサンジェルスに行かなければ証拠が手に入らない羽目に陥る。
ミコと誠介は偶然にも機内で隣同士になり、運命的な出会いを果たすが、父の首相就任を念願している二人の男が誠介の後をつけ、同じ飛行機に乗ってきていた。そこから、ミコと誠介は数奇な運命に翻弄されていく。
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