評価:★★★★☆ 4
勇者が正義で魔王が悪───そんな誰かに刷り込まれたような設定と風潮。
勝てば官軍───勝者が決める正義の世界。
勇者は本当に正義なのだろうか?僕はそんな疑念が頭をよぎる…それは何故か?
それは傍若無人で、正義とは程遠い勇者と出会ってしまったからだ。
夢も希望も持ち合わせてなく、あるのは野望のみ。極悪非道を愛し、人を人とも思わない卑劣な人格。
そんな勇者と行動を共にすることになった僕は、どうなってしまうのか…?情けない偽りの英雄譚がここに刻まれる。
時代:未登録
舞台:異世界
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
今作オーサー初の冒険ファンタジー。主人公の勇者が魔法使いと出会い、そして魔族を薙倒し世界の人々を救う!!!…と言う万斛の英雄譚ではありません。多角的な作品を得意とする作者が、それぞれの登場人物に潜む野望や目的・思考などがストーリーの中に明媚に紡ぎ上げられています。『影があるから光が輝く』ともすると空想世界を壊し、些か説教臭くなってしまうスタンドポイントを差色として織り交ぜ、悪目立ちすることなく馴染ませ1枚の織物にしてしまう表現法には讃嘆措くあたわずにはいられません。勇者は心身共に強く弱さは持たないのだろうか?魔族は邪悪なだけなのだろうか?魔法使いは心に一片の曇りもないのだろうか?1人の勇者と1人の魔王と1人の魔女が繰りなすこの物語は、スタンダードなファンタジー作品がお好みの方にこそ読んでいただきたい一作です。