評価:★★★★★ 4.5
有言実行の男、鈴木。不言実行の男、小林。
高校二年。二人はお互いの思惑の中、馬鹿げたことを始める。「なぁ、なんか面白いことやらないか?」
――中学生の頃、勝手に思い描いてた高校生活ってのは、もっとこうデタラメに面白そうなもんだった。だけど実際の高校生活は思い描いてたものと違ってた。
「胸像を動かすのって、ハチャメチャで馬鹿げてて、面白いことだと思わないか?」
――多分、高校生と言う限られた時間の中で、僕は鈴木と思いっきり馬鹿げたことをしたかったんだと思う。
■本作はダブル主人公物です。
視点が鈴木→小林の順で変わります。
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
男子高校生。その2人の絆はどこまでも固く、読んでて本当に気持ちいい仲の良さです。馬鹿げたことをすると言い出したこの2人が、手を取り合って胸像を動かす。くだらないこと? そう、くだらないのです。それでもその馬鹿げた思い出は、大人になっても彼らの心にずっとずっと大切にしまわれています。まるで正反対の彼らが正反対の人生を歩み、それぞれの道で困難に合い、あの馬鹿げた思い出を思い出し、“原点”へと帰ります。「俺、もう一度! 胸像を、胸像を動かせるかなぁ?」彼の言葉に胸を打たれました。目頭が熱くなります。現代のたくさんの日本人へ送りたい、そんな言葉です。青臭い青春と泥臭い社会を描いた文学的作品です。こんな友情を読みたかった! 素直にそう思えたストーリーでした。感動のラストに涙がホロリ。是非、一読を。
初めは本作を、ちょっとお馬鹿な男子高校生の青春小説だと思っていました。だから期待してなかったのですが、読み終わった後、涙が止まりませんでした。二人の変わらない友情が、私の心に深く響いたからです。人は損得で結びつき、また損得で離れる生き物です。だから大学や社会人になって知り合った人とは、損得の関係性の中、直ぐに別れたりします。でも高校生の頃に友達となった人は違う。お互いの醜い所も未熟な所も知っているから、格好を着けず、本当の意味での親友になれる。本作には、二人の主人公が登場します。有言実行の鈴木と、不言実行の小林。気質も性格も正反対な二人は高校で出会い、ある時、鈴木が言います。「何か面白いことしようぜ」そして二人は夜の学校に忍び込み……駄目です。これ以上は涙が溢れて書けません。武者小路実篤もびっくりの、現代版「友情」。あなたの心にもきっと響くはず。