評価:★★★★☆ 4.3
流川弥生は情報機関公安調査庁に勤務するスパイ。
敵は某国とその在日組織、隠語で「マルセ」と呼ばれている。
弥生の前途は有望であったが、上司と対立して横浜へ左遷されてしまう。
横浜では一切の仕事が許されない「庁内ニート」としての扱いが待っていた。
弥生の心は折れ、喫煙室に引き籠もって漫画やネット巡回に励む日常を過ごす。
外見もストレスで無惨なピザデブに。
まさに身も心も腐り果ててしまう。
そんな弥生を慰めるのはMMO「マッシュ」でのひと時、「みつき」として相方「ねぎ」と一緒に冒険を楽しむ時間だった。
バレンタインデー、弥生は久々の尾行につくも、対象者に気付かれてしまう。
窮地に陥る弥生、そこに謎の女性が現れて──。※「こんな弟クンは欲しくありませんか?」の同一日付とリンクしています。
※LINEノベルにも同時投稿しています
時代:現代
舞台:未登録
この作品はかなり異色の設定の小説です。ラノベ等でよく主人公をする様な能ある鷹は爪を隠す、みたいな実はチート系の主人公はいません。主人公の弥生は国家公務員、要はスパイの仕事をしているのですが、上司に煙たがれ、左遷。そこで腐ってしまい、すっかりおデブに。更にゲームばっかりしてる穀潰しになってしまいます。周囲には彼の味方もいるのですが、それでも現状を変える事もなく自堕落な日々が続きます。そこに現れたのが観音。彼女が弥生と同じ横浜勤務になった事から事態は大きく動きだし――というのが大筋です。ハッキリ言うと観音はヒロインであり、また主役です。弥生は彼女にはてんで敵わないし、勝てるとも思わない。観音が自分に何を抱いているかも気付かないし、鈍感なダメキャラです。でもそんな彼もやがては変わるのです。どう変わるかは是非本編を。最後に一言、これも一つの愛の形です。
世の中理不尽な謀略で貶められる事は誰にでも起こるもの。民間や公務員でも誰にでも起こり得ます。そんな謀略に嵌まったキャリア官僚が、真の愛情と信頼をネトゲの相方から施されてこころの救済と復活を成し遂げます。テンポの良い会話、複雑な伏線、そしてどんでん返し。公安調査庁ならではの民間ならあっと驚く手段で一点に収束していきます。著者の経歴は解りませんが、こんな女上司に窮地を救って貰えたら、もう惚れるしかないです。COOLなのにバリバリ仕事出来て、どSなのに、ほんとはぼっちで人見知り。内容は切れ味バツグンな公安内部の暗闘ものなのにたまらなく萌えてしまう不思議な読後感を是非皆さんにも味わって頂きたいです。絶対、後悔しないですよ。そして、作者の他作品が読みたくなること受け合いです。
公安調査庁の若きキャリア官僚だった主人公は敵対する上司の計略で霞ヶ関の本庁から横浜事務所への異動を命じられ、出世コースから転落した。左遷先では仕事を与えられずに干され、ストレスによるやけ食いで太り無気力になっていく彼に、妹が勧めたMMORPG。ゲームの中で主人公は持ち前の仲間思いで正義感の強い性格から、ネギという人見知りなプレイヤーが冤罪で苦しんでいるのを救い、ネギと相方になる。一方、リアル世界では相変わらず無気力なままの主人公の前に、天満川観音という黒髪黒スーツの女が現れた。出会い頭に飛び蹴りを入れてきたうえ毒舌家な彼女は本庁でも指折りのエースで、主人公の復帰を手助けするため派遣されたという。新しい上司となった観音、主人公のことが前から気になる同僚、後輩、妹にMMOの世界も巻き込んで、主人公の多難の公安ライフが再スタートする。主人公は、本当の自分を取り戻すことができるのか。
主人公は一般に馴染みのない公安庁の職員、職務はスパイ。だがその内情はハッキングでも、セキュリティで防御された施設への潜入捜査でもなく、現代日本においてもっとも重要なリソース、すなわち情報収集。その取得方法は社会人が持っていなければならない誠意それのみ。とある事情で上司に楯突いた主人公は閑職に追いやられ仕事に意義を見出せなくなる。平穏な日常はある日痩身な女性の飛び膝蹴りで崩され、その後理不尽な理由で呼び出された。フラグが立つどころか、空気を吸って吐くように、HBの鉛筆を指でベシッと折るようにフラグは叩き壊され、人間の尊厳をかなぐり捨てるようなブツを残し彼女は去る。懐が深くて浅薄、老獪かつ幼児じみ、話術が巧みでコミュ障という彼女は否応なく職場や周囲を巻き込んでいく。怠惰なキノコアヒージョは見事看板メニューに変われるのか? 糖分控えめのお仕事系ラブコメ、是非ご賞味あれ!