怪異譚 鈴語り 完結日:2014年8月12日 作者:紅野生成 評価:★★★★★ 4.5 あらゆる者が行き交う辻の上に、古き時代から在り続ける旅籠屋。 竹の垣根に囲まれた辻堂と呼ばれる旅籠屋には、人に迷い己に迷った者達が訪れては去っていく。 チリンと鳴るしか能のない、鈴の一人語り。 それは誰にも知られずに闇に埋もれる者達への、弔いの語り。 物言わぬ鈴の、空しい独り言にすぎない。 ハーメルン様にもこの作品を投稿しています。 話数:全19話 ジャンル:異世界ファンタジー 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 霊 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 ほのぼの 時を越えた恋 物の怪 異界 注意:R15 残酷な描写あり なろうで小説を読む
読み始めてすぐに、空気感に酔いました。何がこれほど五感に響くのだろうと思いましたが、どうやら、作品の中にちりばめられている音の効果が大きいようです。鈴の音が直接耳に響くような、涼しい感覚が心地よく、そしてそれは、ややホラーめいた物語の運びによく合っています。この世のものではないものや、日本の風情が感じられる風景の描写は鮮やかです。心や体に傷を負った迷う者たちは、哀れであり、同時に綺麗です。全体的にしっとりとして、和風ホラーが好きな読み手にはたまらない作品だと思いました。哀しさが下地になった、愛らしさ、美しさ。物言わぬ鈴ですが、その音色は雄弁であり、表情すら感じられるほどです。小説情報を拝見し、もっともっと読んでいただきたいと強く思いまして、レビューを書かせていただきました。感覚にうったえる作品だと思います。和ものがお好きな方は、ぜひご一読を。