評価:★★★★☆ 3.5
不慮の事故で死亡した大学生の十川和将は、異世界の大帝国『神聖パルティノン帝国』の第四皇子、アイアース・ヴァン・ロクリスとして転生した。
大帝国の皇子として、暖かい家族や多くの部下達とともに平穏に暮らしていたアイアースだが、その平穏は突如として終わりを告げる。大切なモノを目の前で奪われた彼は、残された大切なモノを守るため、仲間とともに多くの血を必要とする時代の変化の中へと身を投じて行く。
08/01追記 本作には、鬱、陵辱、虐殺、拷問、人体欠損などのダークファンタジー的な要素を匂わせる描写があります。苦手な方はご注意ください。
09/07追記
タイトルとあらすじを変更しました。
旧題『異世界転生皇子~楽勝だと思っていたけど人生そんなに甘くない~』
話数:全183話
時代:未登録
舞台:異世界
雰囲気:未登録
展開:未登録
普通の学生が、異世界に皇子様として転生したら。こんな冒頭から始まる本作。よくある展開としては、恵まれた才能と優れた容姿、持った生まれたカリスマ性で人々を導き、英雄としての人生を送っていく。そんな物語を想像し、そこにあるのは主人公のためだけに存在している世界であると言っても過言ではない。本作においても、主人公アイアースは、恵まれた才能とカリスマ性を有し、そのあたりは数多の主人公たちとは大差もなく、大きな個性はない。だが、彼は他にはないほどの過酷な運命に翻弄され、時にくじけそうになりながらもそれに抗っていく。そんな彼の前に立ちふさがる好敵手たちや戦場をともにする戦友たちの生き様もしっかりと書き込まれ、一人ではなく登場人物全体が主人公ともいえる物語が紡がれていく。過酷な運命に抗い、栄光を手にする。そんな物語を求めている方には、満足いくこと間違いなしと思います。
ギリシア神話に登場する英雄の名を持つ主人公・アイアース。喪われた祖国と散って逝った家族や同胞の屍と涙を糧に、彼は刃を研ぎ続ける様は復讐劇としての側面を補強している様にも思える。 しかし、それだけではない。 彼の戦いは、喪ったモノを取り戻す戦いでもあるのだろう。復讐心だけに身を任せることなく、虎視眈々と敵方の隙を窺い続けるという行為は、著しく精神を消耗し、心を摩耗させる行為でもあるはずなのだ。 だが、彼は邪道に染まらない。 正道を以て抗う道を模索し続けるその姿勢。 だからこそ彼は英雄の名を冠するアイアースなのだろう。 残酷な現実と喪われた未来を求めて抗う彼の軌跡、是非一度、御覧いただきたい。
普通の学生だった主人公が異世界で皇族になり、何不自由なく暮らしている。そんなありがちな転生物語を感じさせる冒頭から一転して主人公とその家族や友人に降りかかる悲劇が物語と重厚にしている。その悲劇の過程で繰り広げられる戦闘シーンは、綺麗ごと抜きに圧巻の一言。一騎当千の猛者が数の暴力に押しつぶされるなど、戦場の現実や醜さもよく現れている。登場人物は多いが、後半からは物語とキャラクターが安定して、しっかりと人物関係を把握しながら物語を楽しむことができ、主人公が元の人格(転生前の人格)に戻っていく過程も自然であり、転生者であることと主人公のキャラクターに違和感を持たせないやり方はとてもうまい。