評価:★★★★☆ 4.2
帝都の下町で修理屋を営む兄からしばらくの間店主を任されたサミウは、帝都で出会った騎士ショシユに男と勘違いされたまま恋心を抱いてしまった。年上で庶民の自分では、彼の好みの女の子にはなれないと、兄が帰ってくるまでの間、友達でいることを選んだサミウの運命は、ショシユの兄の婚約者と出会った時から変わり始める。
以前書いた短編より少し先のお話ですが、主人公は違います。
※桶ではありません。
桶が出張る理由以外は、これだけ読んでも大丈夫だと思います。
※桶は大量に登場します。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
目を閉じれば瞼の裏には薬桶の水面がきらめき、ミントグリーンの色を持った薬臭い香りが鼻をかすめ、風に紛れて恋人達の囁きが耳をくすぐる。かつて、こんなにも幸せで、幻想的な、胸を熱くする水虫の治療があったろうか――そんな心に残る短編小説『救国の英雄の救世主』の続篇となるのが、この『桶は世界を巣食う』です。恋や失恋は人生に幾度もあるもので、人生という括りでは、自分のそれらだけでなく、友人や家族、読んだ本の間にも溢れています。それなら一つや二つの色恋なんてどうでもいい、というわけではなくて、中には決して逃してはいけない一生モノの恋もあるのでしょう。それさえも、手を伸ばさずにいれば、ただ消えて行く。桶のように打てば響く掛け合いの中、外堀を埋められ、背中を押されて、「親友」という関係から脱却しようと歩み始める主人公を、義姉達と共に微笑ましく見守る。そんな温かなラブコメディです。