評価:★★★★☆ 4
シングルマザーの瑞希は電車の中で転びそうになったところを、高校生の栄一に助けてもらった。それはあくまでも日常の中の些細な一コマで終わるはずだった。だけど、息子の智がみょうに栄一になついてしまい……。中央線高尾駅発の電車で始まる淡い恋。中央線の駅名は実在の駅名を使用させていただきますが、それ以外のあらゆる人物・団体等は全てフィクションですので、ご了承ください。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:現代
舞台:未登録
注意:全年齢対象
誰かと向き合うこと。それは自分の未来を見つめることでもあるのですね。 瑞希と智の親子関係、栄一との恋、鈴木さんの存在、全てが温かみと痛みを帯びて描かれています。 忘れたいことや逃げたいことは誰にでもあるけれど、安易なほうへ流れず、常に誠実であろうとする登場人物たちは、それぞれが自分の人生を持っています。 子ども、高校生、大人、先生と、まったく立場の違う人物をリアルに描きつつ、どの人物にも共感できる点がある、本作は貴重な作品です。 恋だけでは生きられない、楽しいだけでは生きられない。だからこそ夢をあきらめないことが必要だし、人に歩み寄ることも、時には背を向けることも必要なんだと、本作を読んでしみじみと感じました。 本当に中身の濃い物語ですが、智のはちきれそうな可愛さと、瑞希のひたむきさ、そして何より文章・会話の巧みさが、あっという間にラストまで引っ張っていってくれます。