複数世界のキロ

タイトルに在る通り、異世界に放り込まれた主人公が複数の世界を渡る話です。奨学金を返し終えてないから、どうにか元の世界に戻りたいと四苦八苦。ここで「もう奨学金返さなくていいぜヒャッハー」とか言うキャラじゃなくて良かった。良い出会いに恵まれ、世界を渡り、トラブルに見舞われてがらも解決して。あらすじはシンプルですが、作り込まれた世界は魅力的なのでご一読あれ。

僕の残念な読解力では、初見で読みながら順次内容を完全に把握するのは、難しかったのです。勿論、分からない部分が出て来ても、そのまま読み進めて先の場面へ進めば、何故そう言った言動に到ったかの説明はありますから、最後までモヤモヤを引きずる事はありません。しかしお話の筋を知った上で読み返すと、何故その場面でその台詞が出たのか、どんな人物だからこの時点で先を読む事が出来たのか、と言った大筋とは少し離れた所に注目して、楽しむ事が出来ました。登場する人物達も、それぞれの事情の中で精一杯生きていて、最後には幸せになって欲しいと応援したくなる、そんな魅力ある人物達です。作者様は別作品（詰みかけ転生領主や六月頃予定の新作）も手掛けお忙しいようですが、個人的には、この『複数世界のキロ』を加筆したり何だったらスピンオフしてでも文庫化していただけないものかと、厚かましく期待しています。

※現在84話までを読み終えた上でのレビューです。　この作品はキロという青年が自分に似た男によって、異世界へ飛ばされ、そこから自分の世界へ帰るために複数の世界を旅するという内容です。　一章は序章という意味合いが強く、物語が本格的に動き出すのは二章から。少しずつ謎が解明されると共に、新たに謎が出てきて読者の想像が膨らみます。　また、確かな文章力でその世界の雰囲気、文化やそこに住む人々が描かれていて、中でも二章の世界観はよく出来ているなと毎度、感心します。おすすめの作品です。