さよなら喋る猫 完結日:2015年1月30日 作者:gojo 評価:★★★★☆ 4.3 ――お前は喋る猫だからね ――ああ。俺は喋る猫だ 三つの視点で描かれる、父と子、“ヒーロー” の話…… 話数:全10話 ジャンル:ヒューマンドラマ ヒロイック・ファンタジー ファンタジー 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 猫 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 家族 文学 演劇 父子 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
小学生のヒデ坊の話し相手は、オッドアイの喋る猫レオンだけ。 帰りの遅いお父さんの為にご飯を作って、二人きりで待っています。>「大丈夫だ。安心しろ。俺がここにいる」 現実と交わる演劇。 何が虚構で、何が事実なのか。>「今のはなかったことにしてくれ。全部忘れよう」 これは誰の過ちで、誰の行いが正しいのか。 助けてくれる本物のヒーローは居るのか居ないのか。>「お父さんはヒーローだもんね」 目を曇らせることなく見極めようとすればするほど輻輳する現実。 レオンに「さよなら」と告げるのは…… 幾つもの視点と視線が真実とつながって、物語の全容が組み上がっていくストーリーテリングがお見事。 人の弱さが悲しくて、どうしようもなくて、でも、あたたかい。濃い群像劇。
演劇において、役になろうとするなと言われることがある。その人物をその人物たらしめるのは周囲の視線であり接し方であると。主役を創るのは主役を演じるものではなく、むしろ脇役。周囲からどう見えるか。それがその人物に対する周囲の認識。現実世界も然り。大切なものを守りたい。ただそれだけのことが難しい。自分の大切なもの。誰かの大切なもの。すべて守りたいのに、それは時に相反するものでもあり。大切なものを守るためにヒーローになりたかった男。そしてそれに関わる人々。もがきつつも前だけを見つめる姿は周囲の人々にどう映るのか。読者にどう映るのか。きっと画一的ではない。それほどにこの作品の登場人物たちは生きている。「さよなら喋る猫」の舞台を終えた彼らに、心を込めて言葉の花束を贈る。