評価:★★★★☆ 4.4
事故死した女子高生ミツオカ・マツリの魂は、鳥になって、廃れた世界に迷い込んだ。そこでは、マエストロと呼ばれる者が真鍮と鉄の人形を造り、迷える魂を吹き込む。調律師と呼ばれる者が、人形に歌と舞を仕込む。できあがるのは、極上の歌を唄う真鍮糸雀(カナリア)。マツリは〈赤のマエストロ〉ダムロッシュの手によって、優れた真鍮糸雀として生まれ変わった。慕っていたひとに似た調律師アイレンベルグに、マツリは惹かれていく。しかし、幸か不幸か、マツリを生み出した男たちも、新しい世界も、……狂っていた。/ミライショウセツ大賞優秀賞受賞作品。書籍化され、エンターブレイン様より発売中です。また、Pixiv様でも全文を公開しています。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
最初は恋愛要素に重きを置いたファンタジー小説だと思い読み進めたのですが、期待はいい意味で裏切られました。退廃的な淀んだ空気の街と、そこへ迷い込み真鍮糸雀となった少女マツリ。彼女と同じく真鍮糸雀と呼ばれる少女達は、全て死んだ人間の魂を用いて作った人形です。真鍮糸雀はその歌声で人を狂わせます。その街に住む人々の誰もが彼女達に焦がれてしまうくらいに。歌を聞く人間のディストピア染みた狂気や、人形を作るマエストロたちの職人特有の思考が驚く程に克明に伝わってきます。繊細な恋情、歪んでしまった愛の情熱や、舞台の上で煌めく剣の光まで全てが繊細に描写されており、とても素晴らしい作品だと思います。是非皆さんにも、少女達の狂気を味わって頂きたいです。