評価:★★★★★ 4.5
ここは、竜王が民へ加護を与え、調和をもたらす世界。
カタラクタ王国へ侵攻する軍へ参加した、大公子アルマナセル。
彼は、敵国の祀る水竜王の姫巫女ペルルを自国へ護送する任に就く。
二人はやがて、世界の命運を巡る陰謀に巻きこまれていくこととなる……。三百年前の大戦から続く因縁と業、悲劇の末に彷徨える民、失われた竜王。
欠け落ちた世界の均衡を、彼らは回復させることができるのか。※他サイトにて完結済のものを加筆修正して投稿しております。
※全編改訂完了。主に固有名詞の変更のため、改訂前のものとは相違があります。ご了承ください。
話数:全234話
時代:中世
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
この小説は歴史ファンタジー戦記に該当する物語だ。数百年もの因縁。世界を守ろうとする者。また世界を壊そうとする者。双方の思いが歴史を動かす。本来であれば、こうした話には悪の立場にある者が如何に非道で外道なのか、という描写があるものだが、この小説に関して言えばそういった描写は最低限であり、それどころか彼らは果たして真の意味で悪であったのか曖昧だとも言える。だがこの視点は冷静に考えれば至極当然だ。何故なら、立場はどうあれ善悪という物の見方は見る位置を変えれば容易に変わってしまうのだから。だからだろうか?僕はこの物語の敵を憎めない。勿論、非道な行いをしているし、弾劾されてもおかしくない立場に彼はいる。でも、憎めない。何故なら彼もまた、生きる事に精一杯だったのだろうから。善悪という立場を越えた何かを僕は感じた。皆さんはどうだろうか?答えは千差万別、それでいいと思う。
かつて世界に召喚された魔王《アルマナセル》はある姫に恋をし人として生きた。その始祖と同じ名を持つアルマナセルは、やがて世界をかけたあまりにも大きな策略に巻き込まれてゆくーー。本編、219話で紡がれる壮大な旅と戦いの最中、時にすれ違い、支え合い、たまにからかって笑いながら足並みが揃ってゆく様は、1話1話読むごとに読者である貴方も主人公達の仲間の一員として旅を続けている気持ちになるはず。それほどまでに、この物語の登場人物達は『生きて』いる。その中で、火竜王の高位の巫子グラナティスと彼に仕えるクセロを推したい。竜王宮から殆ど出たことのない巫子と、汚れ仕事を生業としていたクセロがどう出会ったのか、ここも見ものの一つだ。私はこの2人の主従の関係にどっぷりとハマってしまった。魅力的な人物が多数登場する本作、お気に入りの人物を追うのも楽しいに違いない。さあ、旅立とう。彼らと共に。
高潔な愛を飄々と謡う、亡国の詩人ノウマード。強く清らかな天然素材、水の姫巫女ペルル。敵に慈悲なく、味方にはさらに容赦ない炎の巫子グラナティス。彼らに導かれ道を拓く――〈魔王〉アルマナセル。連綿と続く歴史、広漠たる世界を舞台にしながら、彼らはどうにも人間的だ。馬を引き寝床を探す日々で、疲れ、怒り、勘違いする。嘆き、いたわり、思い出す。ささやかなことで笑いあう。ごく普通の生活が、そこには息づいている。竜の膝下、剣と魔法が邂逅し、超常の時を生きる者と呪われた神が潜む世界でも。そして世話焼き従者に世慣れた悪党といった、影のような人々が、やがて予期せぬ大任を担う。ささいな描写が重大な事実を示唆していたと気づく。通り過ぎた風景が、ある強大な者の凄絶なる置き土産と知れる。数々の伏線が結集するさまも、見所のひとつ。格上のファンタジーを楽しみたい貴方、どうぞ、竜の舞う丘へ。
大公子アルマナセルは『魔王』の子孫。それゆえ本国では微妙な立場だが、あるとき『敗国の姫巫女』を本国に護送する役目を受ける。最初は敵意を向けてきた巫女姫だったが、本当は可憐で優しい少女。アルマナセルは段々と彼女に惹かれていきますが……。それぞれの竜王に仕える巫子たちの思惑。恋の行方。美しい描写。どれも素敵です。厳しくも優しい、そして時々クスリと笑わせてくれる本格ファンタジーをどうぞ!!