評価:★★★★☆ 4.3
昔、竜と人は同じ生き物だった――
そんな言い伝えの残るバルト王国。周囲の国々の侵略から竜に守られ、四百年間もの間、平和を保ってきた国の真実とは―――
側室の息子として生まれてきた少年リヒトは、飢饉にあえぐ国の為に竜神への生贄に捧げられた。
先祖がえりとして生まれた少女イリスは、国法の名の下に生まれてすぐに生贄にされる。死ななければならなかったはずの少年と少女が、生きる場所を手に入れる
話数:全57話
ジャンル:エピック・ファンタジー 異世界ファンタジー
時代:未登録
舞台:未登録
長きに渡り、竜によって外敵から守られてきた王国バルト。養父の仇を追いながら自らのルーツを探る少年リヒトと、制御できない竜の力をその身に宿した「先祖返り」の少女イリスは、王国の陰謀に巻き込まれ、やがて伝説の実像を知ることになる。完結済。ファンタジーの形を取ってはいるが、この作品の核にあるのはリアルな人間ドラマだ。主人公二人のみならず、ほとんどの登場人物が(敵役でさえ)過去に傷を抱えている。喪失に苦しみながら、それでも大切な人を守り、自分の居場所を求めて足掻く姿はひたむきで美しい。シビアな展開も多いが、筆致には一貫した穏やかさを感じた。いい意味でキャラクターと距離を取った、大人の視点で描かれているからだろう。リヒトが作りイリスが選んだ竜と人との居場所が、この先も幸せであるように。