誰も知らない勇者の去る日 完結日:2015年6月10日 作者:葦原佳明 評価:★★★★☆ 4.1 大学に入学するも、引きこもりとなった黒田太陽は日々ゲームをして過ごしていた。ある時現れた謎の猫に人類を救うための本を託される。しかし、本を使うためにはある代償が必要だった。 ※週一更新予定です。 ※アルファポリス様にも投稿させていただいております。 話数:全27話 ジャンル:その他 登場人物 主人公属性 男主人公 職業・種族 猫 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 ニート 人類を救う 兄妹 家族 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
「どんな人間だったら、この本にサインをしなかったとおもう?」 青い猫は問う。 その本に、サインさえすれば、人類は災厄から守られる。簡単なことだった。 しかし、代償は必要で、それは自身の死。いや、それ以上の、生きた証が、記憶が、実在根拠が、誰の心にも残らない。彼らのことを、誰も知らない。 もともと彼らは、存在せざるかのように。それはきっと、自己犠牲は、勇者のように。 時計が差し迫る。 彼はまだ若い。 彼は健康で。 そして、彼は――孤独だった。 ゆえに、彼は答える……。 針と針が重なるその日、きっと誰かが去る日だろう。
街角で。知らない部屋で。行ったことのない場所で。 ふと足が足が止まる。 涙が溢れだして聞こえない声を求めて耳を澄ます。 記憶にない香りを求めて、懐かしい味を探っても涙と鼻水でなにも感じることはできない。 あなたは盲目になる。 勇者になれる方法がある。 世界を救うために大冒険をする必要はない。 ただ名前を書くだけで人類は救われる。 そして、その名を刻んだ人間の存在は消滅する。 記憶の隅にすら、彼や彼女が刻んだ痕跡を残すことはできない。 あるものは自棄になって。 あるものは愛するモノのために。 あるものはすべてを満たしたがゆえに。 あるものはただそのままに。 誰かが勇者になる。 誰もが勇者になれる。 誰も勇者になることはかなわない。 この物語を読み終えたあと、流れる涙はあなたのために勇者となった方の残した痕跡なのかもしれない。
一度しかない人の人生。 皆さんは自分の人生の意味を考えたことが、ありますか? 憲法においては幸福を追求することが人の生まれた意味であるとされていますが、幸福を追求するとは何なのでしょうか。 作中では主人公を始め数人のキャラクターが自らの人生を秤にかけ、選択をします。 代償は“自らの命”であり、 “眼に見える生きた証”ーーー 主人公は普通の大学生、黒田太陽。 ある日彼は、本当の意味においての人生の選択が出来る権利を手に入れます。 “生きるのか” “死して謳われぬ勇者となるのか” それは究極の選択です。 先人達の決意と、選択。 代償と、形の無い名誉。 太陽は何を思い、どちらを選んだのでしょうか? 不思議な猫との出逢いがもたらした、誰も知らない勇者の選択の証。 それを、見届けてあげて下さい。
自分の命と引き換えに人類は救われる。けれど、自分のことは誰の記憶にも残らない。 誰一人として感謝しないし御礼も言わない。それでもたった一人で人類を護るという決意をする……そんな、尊い自己犠牲の精神を持つ勇者。 それは小説やゲームの中では当たり前に存在しているけれど。だけど本当に自分の身にその決断が委ねられた時、あなたは迷いなくそれを決断できますか? 唐突にそんな選択を迫られたのは平凡な日常を送っていた黒田太陽。 彼の葛藤と迷いを描くこの作品は、他のヒーロー物とは一線を画しています。 太陽の葛藤、迷い、そして決断していく様は、無為に生きている人や生きていくのに疲れてしまった人に、大切なメッセージを伝えてくれます。
普通の冴えない大学生だった黒田太陽。そんな彼のもとに、不思議な青い猫が現れる。そしてその猫はこう言う。「もしも、今、人類が重大な危機に直面していて……。そして、あなたがその危機を救えるとしたら、あなたは救いたい?」そして猫はある本を取り出す。そこに名前を書き込めば、人類の危機が救えると。ただし、自分の命とひきかえに――。これは、一人の人間が誰も知らないところで勇者となる。そんな、優しくも切ない、でも大きな勇気をもらえるお話。