評価:★★★★☆ 4.4
戦前のオタク柿揚青年は現代で言うところの萌同人誌「萌星」を楽しみに生活を送るが、ついに戦争に行くことになる。しかし柿揚はフィリピンの俘虜収容所で新生「萌星」を立ち上げ、オタク生活をフィリピンでも過ごす。その物語。
(noteにも投稿しております。)
話数:全38話
ジャンル:エピック・ファンタジー ミリタリー
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
第二次大戦でオタクが活躍すると聞いて、なろう系に毒された我が脳はNAISEIだとか無双だとかの軽い読み物を予想していたが、良い意味で裏切られた。 セーラー服美少女の妄想に人生を捧げる主人公柿揚。日本の将来を憂うなどと我々がSNSで呟くこととさして変わらない議論を交わす級友たち。趣味を拗らせ過ぎた同人「萌星」の廃人仲間。一癖も二癖もあるが大体変態の軍人共。 こんな連中がいるなら萌え絵くらいあっていいと納得させるリアリティがある。 そしてリアルであるからこそ、戦争という運命は大きく黒ぐろと立ちはだかる。柿揚は否応も無く招集されあっさりと敗北するのだ。 そんな中でも彼は生きることと=妄想を諦めない。 正に日本男児の鑑にして真のオタクであるのだろう。そんな彼ならどんな時代でも己を貫き、萌えに生きていけると勇気を貰える。 軍神絵師柿揚徳治万歳。 二次元に熱あれ、オタクに光あれ。
本作は太平洋戦争時代、時代を先取りし過ぎたとあるオタクの人生を描いています。の○くろの時代に墨絵でハイライト入りの目を描き、朱墨の濃淡で頬の赤みを表現するという萌の先駆者にして追求者の主人公、柿揚。彼の妄想は戦地でも衰えず、ついに俘虜収容所で同人誌を立ち上げるに至ります。美少女化した駆逐艦や戦車が戦うという(当時としては)新しすぎる旋風に、俘虜も米軍士官も萌の虜にする始末。随所に仕掛けられた数々のメタネタに漫画やアニメが好きな読者は度々くすりとさせられるでしょう。戦争という重い主題を扱いつつも、本作の雰囲気は終始軽妙でユーモラスなものです。それは、いかなる時でも妄想しネタを拾い萌を探す柿揚のスタイルに由来するものでしょう。彼の精神は以下の一言に集約されます。「想像は自由である」本作は過酷な状況下でも自由に想像の翼をはばたかせることの力を教えているように思います。