評価:★★★★☆ 4.3
一言で言うと、真衣はずぼらな女だった。その明るい大らかさに、僕は癒されていたはずなのに――一緒に暮らし始めると、彼女の無神経さは徐々に僕の神経を苛立たせた。
彼女を『片付けて』しまった後も、彼女の気配だけがいつまでも僕に付きまとう。
第9回アルファポリスホラー小説大賞で「読者賞」を頂きました!
話数:全3話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
付き合い始めた時は可愛いと思っていた、パートナーの些細な癖が許せなくなった時、あなたならどうしますか?ドアがきちんと閉められずに1cmだけあいていたり、洋服が脱ぎっぱなしだったり、人の話をすぐ忘れたり……。その1つ1つは本当に他愛のないこと。けれど、その何気ないことの積み重ねが臨界点に達した時、あなたが選ぶのは「喧嘩」でしょうか? 「別離」でしょうか。それとも……元凶の「排除」でしょうか。大事なことに気づかぬまま、自分だけが我慢をしていると思い込んだ主人公の身の回りに起きる不思議な出来事。それは少しずつ主人公の心を蝕んでいきます。失ってやっと、真実を知る主人公の哀れさは、身につまされる思いです。そしてこの作品の怖いところは、誰もが主人公ないし主人公の恋人の立場に容易になりうるところなのです。大切なパートナーに不満がある方は、読んだ後ちょっぴり我が身を振り返ってみてくださいね。
几帳面な男と大雑把な女のお話。ごくありふれた暮らしだったけれど、徐々にズレが生じる。日常の中に潜む不満や苛立ち。性格が違う相手だからこそ、確かにそれは募っていって――やがて本人をも知らぬ間に、狂気へと変貌した。緩んだ蓋ははたして何を意味しているのか。〝片付けた〟ものが再び姿を現すとき、男は本当の自分と対面する。リアルな描写が魅力的な作者様が描くホラーは、苦手とされる方でもすんなりと読み進められるかと思います。ありふれた日常。けれど、その中に隠れた様々な思いが丁寧に紡がれていく物語です。美しい文章とともに、誰の中にもある小さな狂気を覗いてみてはいかがでしょうか。
几帳面と大雑把なカップル。互いにないものを持つ二人が同棲を始める。次第に募るのは、ちょっとしたことで起きるイライラ。ドアの隙間。脱ぎ捨てられたスリッパ。散らかったパン屑。――ペットボトルのキャップの蓋が緩んでいる――暴走する狂気がそのとき、彼を支配する――。日常に起こりうる些細な出来事がリアルに描かれ、作者の圧倒的筆力に否応なくその世界へと引き込まれていきます。彼が起こす罪、そして死んだはずの彼女がなぜ彼のもとへと戻ってきたのか。背筋をひやりと冷やしながらも、読者は先を読む手を止められなくなるでしょう。あなたも秋の夜長にこの上質なミステリーホラーを読んでみてはいかがですか?