幼少期に親に捨てられた幸村(さちむら)誠(まこと)は、東京都内の児童養護施設で育った。
親に捨てられた記憶がトラウマとなり、周囲に溶け込むことができず、自分は生きている価値がない人間だと思い続けていた。
二十歳の誕生日を迎え、施設を卒業した幸村は、就職した。
真面目に働いていた幸村だったが、あるとき、事件を起こしてしまった。自分を捨てた母親の人格を冒涜した同僚を、衝動的に殺してしまったのだ。
幸村は、逃亡を図った。変装を施し、警察の目を気にしながら、隠れるように生活する。
行く先々で心を許せる相手と出会い、次第に、他人からの好意を受け入れることができるようになっていった。
しかし、どの地での逃亡生活も、長くは続かなかった。
そんな中、逃亡中の幸村は、大阪へ流れ着いた。
そこで、倉橋(くらはし)知美(ともみ)と出会う。
知美にも、親に捨てられたという過去があった。
そんな二人の同居生活が始まった。次第に、二人の中に恋愛感情が芽生えていく。
知美との将来を意識した幸村は、自分が逃亡犯であることを打ち明けた。
打ち明けられた知美が、どこまでも一緒についていくという言葉を口にする。
その言葉に安心した幸村だったが、やがて、葛藤が生じた。
真の幸せを手に入れるためには警察に自首して罪を償ったほうが良いのではないかという思いと目の前の幸せを失いたくはないという思いとの間で、葛藤し続けた。
悩み続けた幸村だったが、気持ちが、警察に自首する方向へと傾いていく。
その気持ちを知った知美が、思い悩んだ末に、受け入れることを決意した。
二人で決めた自首の日、知美にいっときの別れを告げた幸村は、最寄りの警察署に向かった。
警察署に到着した幸村だったが、知美にどうしても言っておかなければならなかった言葉があったことを思い出し、知美のもとへと引き返す。
引き返した幸村に、思いもよらぬ事態が待ち受けていた。知美が、殺されていたのだ。
絶望が、幸村を襲う。
そんな中、幸村は、思いもよらない人物が犯人であることを知った。
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