評価:★★★★☆ 4.1
種後島宇宙センターの見学に来た顧問の大山と双子の兄弟。
タキオン発射実験を野外で見ようと二人は丘に座り込むが、弟の栄太は事故に巻き込まれ、意識を失う。
気づくと栄太は地球の記憶を持ったまま、マチュラ大陸の赤子として母親に捨てられる瞬間であった。
ベルカンプと名づけられたその少年は己の好奇心を我慢出来ず、やがて異国の知識を持った質問少年として街の噂になりはじめる。
その噂がとうとう王宮にも届き始め、ついには王の前で審問会が開かれた。
そこで出会った大賢者ピエトロと懇意になり、ついには地球との回路を開くことに成功する。
しかし、その知識を恐れた内官達はベルカンプを育ての親共々左遷し、自国領から一番遠い、名も無い砦へ追いやってしまった。
50年以上争いの無かった砦に何の因果か盗賊の群れが襲いかかり、圧倒的数的不利な戦況はわずか6歳の少年の手に委ねられる事になるのであった。
話数:全52話
ジャンル:SF
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:近未来
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
この物語に目を通せば、すぐに主人公ベルカンプに惹かれてしまうことは間違いない。実に人好きのするキャラクターである。世をすねた転生者が多い中、これほど現地にしっくりと馴染む転生者を主人公に据えた作品は珍しい。その明るさ、爛漫さ。彼を好きになるなというほうが難しいだろう。 そんなベルカンプが、親代わりの兄妹と一緒に赴任するのが、タイトルにもなっている、後にベルトラップ砦と呼ばれる砦である。砦の防将であるカーンは万夫不当の剛の者。しかし性格に難があり最前線の砦で無聊を託つ日々を過ごしていた。そのカーンと共に、ベルカンプは砦を襲う盗賊団と戦うことになるのだが…… この攻砦戦を描く五十嵐氏の筆の冴えは凄まじい。ここまで優しく時にコミカルに描かれていたベルカンプ周りの描写が一転、ド迫力の戦闘シーンの連続へと変わるのだ。剣が走り矢が貫く、真に迫る筆致に時を忘れ読みふけってしまうこと請け合いである。