コーンフィールドゾンビ 完結日:2015年11月27日 作者:T長 評価:★★★★☆ 4.2とうもろこし畑のかかしゾンビを愛した男の悲劇。グロくて鬱なおはなしなので、苦手な方はご注意ください。 自サイトにて掲載したものを僅かに改稿しております。 話数:全3話 ジャンル:その他 恋愛 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 ゾンビ 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 鬱 注意:残酷な描写あり なろうで小説を読む
レオナルド・ダ・ヴィンチは言った。「美しいものと醜いものは互いに引き立てあう」と。その箴言が肌で感じられるような作品である。描写と場面の技巧と、題材とが相まって身近のことに思われるような臨場感があり、また世界観を確立させているので、読者はいよいよ感情移入を果たして、引き込まれていく。そしてまた、堅固な構成力に裏打ちされた展開によって、読者は文学的抒情を得ることだろう。
ゾンビの飼育を題材にした映像作品は複数ある。ゾンビの蔓延が落ち着いた社会を描いた映像作品もある。 しかし先行例があるからといって新鮮味がないということはない。これはポスト・ゾンビ作品群の一環として楽しめる一作だ。 読みながらずっと、映像化したものを見てみたいと思っていた。 もちろん小説単体で読んでも、海外を舞台にした翻訳小説風の文体で完成されている。まとまりのいい短編小説として、読者に充分な満足を与えてくれるだろう。 その上で、作中で描かれたゾンビがいる畑、労働を強要されるゾンビと共感する主人公、それらの美しくも醜い情景は、より広い人々に共有して欲しいと思った。 過疎化した限界集落の人間関係、その共同体で疎外感をもっている主人公の姿。これは娯楽作品であると同時に、現代日本社会にも通じる普遍的な問題をとらえている。