何処へいこう 完結日:2015年12月31日 作者:孤独堂 評価:★★★★☆ 4.3 5年前に離婚してから娘に会っていない中年男と、「自分は死んだ方が良いんじゃないか?」と思い詰めている女子高生を巡る人間模様。若干ミステリー仕立て。基本的にはそれだけです。 あなたはひとりぼっちじゃないですか? 話数:全60話 ジャンル:ヒューマンドラマ 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 ホームドラマ 不安 人間 優しさ 友達 問題 夫婦 愛情 日常 死 現代 生活 親子 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
「二週間の間で、私を「死にたくない、生きていたい」と思わせて……。出来なければ、あなたの目の前で死ぬ――」瀬川美冬の衝撃的な告白に対し、友達二人と偶然出会った中年男性が真剣に心を通わせ合う二週間がスタートする。それぞれが心に持つ己の弱さを知り、人の気持ちを理解しようとすることの大切さを知っていく。簡単そうで難しい「人の心」に気付かせてくれる……そんな心温まる小説です。
「死にたい」と口にする女子高生と借金がバレて離婚した中年男。人生に疲れた二人が傷をなめ合う援助交際か?と思ったらそんなちゃちな話ではない。少しずつ明らかになる女子高生の家庭。こんな家庭で育ち「ラブホ行く」と挑発する女の子にどう「生きること」に希望を見せることが出来るのだろう。小説を書く上でハッピーエンドは難しい。女子高生と中年男が二人で「こんな人生とはさようなら」という物語でもドラマチックに流れて読者に何かを残すだろう。だが……。作者さまの優しさと厳しさの溢れる物語。家庭とは何だろう。家庭のイメージと聞かれたら「暖かい」と答える人が多いだろう。でも実は脆くもあり、窮屈な場所でもある。人生いつも雨降りではない。いつかは晴れる。とは言うけれど。でも悲しいかな、晴れてもまた暗雲は立ちこめる。すぐに晴れることはない。それでも分厚い雲の上にはいつも満天の星が輝いているのだ。
この物語はある一定以上の年齢の『普通の大人』になった者なら誰もその立場になりえるような、名もなき人々のお話です。色々なものを失いながら、時にはそこから眼を逸らし逃げながらも、けれど逃れられぬしがらみに足を取られながら、空いたままの空白を埋める為の術を、心では必死に求め続ける。そういう大人の苦い人生を描いた物語です。そして誰もが通常では自分の経験を踏まえた視野でしか物事を捉える事が出来ない筈が、歪んだ境遇から『大人になることを強制されてしまった』女子高生、美冬。終盤にかけて近付くリミット。追い詰められていた『彼女』を本当に救えるのは何なのか?内容も会話主体で完結まで85000字程度なので、とても読みやすいと思います。
内容は出来るなら担ぐのを避けたいくらいな重荷。運命が軽い語り口でそそのかす。大人でも子供でもその重荷を担ぐキツさは同じで、だから担いだ重荷を見つけると少しだけ優しい気持ちになれる、その荷の重さを自分も感じて生きているから。この物語は他人同士がお互いの重荷に気づく、見つめ合いわかり合いたいと身を寄せる。お互いに原因は過ちだと知っている、結果が赦しあいになれるか、互いがどのような未来を求めるのか、男と女が親と子が自身の心を震わせて本当の音を響かせる。皆んな何処にいくのか、あなたは何処に行きたいのか、見つめていたのは‥
女子高校生が命を賭したゲームを基本ラインに物語は展開されていく中、それほどドロドロしていないのは著者の巧みな誘導能力によるものだろう。とにかく読みやすい。飽きない。次を読ませてしまう何かがこの小説にはある。王道でありながら今風でもある、テンプレ感を漂わせつつも斬新である……ここまで読み手を夢中にさせる背景には『家族』という社会の最小単位を貪欲に追求している二つの世代、彼らに思わずエールを送っている自分を見出すからではないだろうか、と私は考える。一気読みしたいなら、この小説です。
ひたすら死にたがっている少女と、どん底を見た中年男。それに巻き込まれていくクラスメイトたち。個性的ではあるが、特別ではない人々が繰り広げる悲喜劇といったところか。特に大きな出来事が起こるわけでもない話を読ませてしまう魅力がこの小説にはある。淡々と綴られる文章に味わいとユーモアがあるのだ。結構深刻なことが語られているシーンでも、読者にあまりそういう意識を持たせない。良くも悪くもこの作者の持ち味だと思う。所々に差し挟まれるエピソードが小説にリアリティをもたらしているのも魅力の一つだ。日頃の人間観察や取材の成果だろう。今後の展開がなかなか読みにくい作品ではある。ここまで読んだ印象では一種の喪失の物語だと私は思った。失われたものがどう回復していくのか、もしくはしないのか、今後に注目したい。