評価:★★★★☆ 4.4
二十歳の誕生日を明日に控える彩陽(さよ)に、思いがけない人物から手紙が届く。
細野 雨衣(ほその うい)。
その人物は、五年前に他界した彩陽の大伯母であった。
信じられない思いで封筒を開いた彩陽は、便箋に書かれた内容に驚く。【高田 彩陽(たかだ さよ)ちゃんへ
二十歳の誕生日、おめでとう。
直接会って伝えたかったけれど、手紙に残すことにします。彩陽ちゃんの振り袖姿が見られない事が残念で仕方がないけれど。
さて、この手紙が届くのは二十歳の誕生日前日でしょう。それには理由があるの。
誕生日のサプライズに謎解きイベントを行った事、覚えているかしら ?
同封した名刺の場所に、私からの最後のサプライズが待っています】誕生日当日。
恋人と共にギャラリー茜へ向かった彩陽は、待っていたサプライズにワクワクしながら挑戦する。
それが、大好きな大伯母の閉ざされた過去を開くとも知らずに――。前半:ほのぼの、後半:少し重め、な展開です。
謎解きと言ってよい推理ですが、お楽しみ頂ければ幸いです。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:現代
舞台:未登録
雰囲気:ほのぼの
展開:未登録
注意:全年齢対象
二十歳の誕生日に亡き大伯母の画家から届いた手紙。このお話は思いがけず届いたその謎めいた手紙をきっかけにして秘められていた過去を紐解いていく推理小説です。謎解き役の主人公とその恋人は本当に何処にでもいそうなごく普通の仲の良いカップル。けれどその「普通さ」がとてもいい雰囲気を出していて素敵で読んでいて和みます。やがてストーリーが進んでいくにつれ明らかになっていくのはそんな彼らとは対極に位置するような人々の間で起きた、言葉にならぬようなとてもとても哀しい過去。 「その時、何があり、どうしてこれが今ここにあるのか」が主人公彩陽達の前でひとつに繋がり明らかになった時、この物語を読んだ方にはそれぞれにはきっと特別な感情が生まれているはず。 9ページだけとは思えないほどに凝縮された内容になっています。心に残る特別な物語を、あなたも是非。
粗筋で心が踊ったので予想はしていたが感嘆の思いが溢れた、日常を描いてここまでとは。心理描写と状況背景の結び方が秀逸で、心情から行動を描き、想像によって行間を読ませる。特に人物造形、性格を表現する仕種、科白などが巧みで普段の生活を想像し易く、描かれていない奥行きのある現実を連想させる。難しく、複雑な物語。なのに柔らかな口当たりで気軽に読め、読み終わる頃には重厚な主題が濃厚な読後感を演出し、読者は語られない真実を、登場人物達の心境を想い、自身で想い想いの文を行間に書き上げ味わえる。そんな作品に仕上がっている。