ファイエルベルクの祈祷師《１》

山岳国家ファイエルベルクで暮らす17歳のフェリスは、ようやく祈祷師の仕事が板についてきた勤労女子。山間の集落を巡り、お年寄りや子供、病床人の世話をし、人に喜ばれ、なおかつ生活費もいただけるという一石三鳥のこの仕事を愛し、情熱を傾けていた。

そして祈祷師として2年目が経とうかとしていた折、大口の仕事の依頼を受け隣国デーネルラントに向かうことになった。

デーネルラント王国では、得体の知れない呪術師がついに現れ、その対応に苦慮していた。そして空気の読めないフェリスは、その渦巻く陰謀にうっかり巻き込まれてしまうのだった。

細かいことは気にしない、祈祷師フェリスの冒険物語。

＊＊登場人物＊＊

＊フェリス
・・・ファイエルベルク国の新米の女祈祷師。17歳。幼い頃の記憶がない。ホーエンドルフという街に住んでいる。

＊ハナ
・・・フェリスの”護衛役”であり母親代わり。

＊ラドル
・・・見習い祈祷師。８歳。フェリスの助手をしている。幼い頃に身寄りをなくし、フェリスたちと一緒に住んでいる。

＊ローレル
・・・フェリスとラドルの祈祷師としての師匠であり、二人の父親代わり。最近は主にホーエンドルフで薬師の仕事をしている。

＊クリス（クリスチアン=グロースフェルト）
・・・デーネルラント王国の辺境伯。21歳。西の隣国であるランチェスタ王国やファイエルベルク国と国境を接するグロースフェルト領の領主。

＊シルヴィ
・・・グロースフェルト軍の兵士で、クリスの部下。27歳。

＊ルッツ（ルードヴィヒ=ガリエル）
・・・ガリエル伯爵家当主。クリスの兄で、元グロースフェルト領主でもある。妻のサリダ、息子のセドリックと共に現在は首都ノルトハーフェンに住んでいる。２年前の夏に家族でファイエルベルクを訪れ、フェリスとはその時に知り合った。

＊リリー
・・・グロースフェルト城のメイド。

＊ザーシャ
・・・ホーエンドルフで雑貨店を営む女店主。

＊ダン
・・・祈祷師協会の会長。

＊アラン=ピエル=プリエール（故人）
・・・デーネルラント王国の公爵。東側に隣国デーネルラントやファイエルベルクとの国境を接しているフォレ・ブランシュ（白い森）領の領主であり、ブラン城が滅んだ時に謀殺された。

＊アナベル=ピエル=プリエール（故人）
・・・アランの妻。