評価:★★★★☆ 4.3
――はじめ、それが一体なんなのか理解できなかった。
釘貫睦(くぎぬきむつ)は道端に『眼球』が落ちているのを見つける。
それは存在があやふやな化物である彼女の体の一部だった。
手にした途端、それは釘貫の眼窩に寄生し、彼は見えないものが見えるようになってしまった。
話数:全22話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
完結日:2016年8月6日
作者:空伏空人
盛り上がりで鳥肌モノの作品は多くある。 しかし冒頭でゾクゾクきたというものはどうだろうか。そうすると急に数が少なくなる。多分、計算されたシチュエーションや単純な筆力、そしてセンスの総合芸術だからだ。 私にとってこの作品はそれにあたる。 眼球を拾うというだけでもかなりのインパクトのある設定なのだが、それを脳内再生を容易にする文章のセンスと読みやすさはまるでホラー。 しかし序盤で明かされる明確な物語の方向性はただのホラーにはとどまらずバトルや青春さえ匂わせる。 別作品のゔぁんぷちゃんでもそうだが、この作者の描く「人外」は人よりも人らしい。もちろんこれは褒め言葉だ。人外だからと思考放棄してキャラクター性を捨てていない。意思を持ち、そして動くのだ。 そんな現代の怪奇ともいえる異能バトルがここにはある。 まだ構成について語るには時期尚早かもしれない。しかしこの熱の冷めぬうちに
妙に人間臭い化け物は最近流行のライトノベルの物だ。いや、まあ日本の妖怪変化の類は意外と人間臭いのが多かったりするのだけれど。話の展開、キャラクターの掛け合いが軽妙で読みやすい。読み易いというのは個人的に文章のリズムを作るのが上手いという事だと思っているのだが、そういう意味で実に読み易い。学園物の異能バトルという、鉄板の舞台と展開、ソノラマ文庫のような、すこし懐かしいジュブナイル小説風味を、今風のライトノベルに仕上げるのは、若者ならではの特権だろう。オッサンの私ではこうは行かない。まだ始まったばかりのお話だが、今後の展開に期待できる良作である。