【2014年に投稿した〝アゾット ―女神創造計画― の全面改稿作品です。一から書き直しをしているので、内容は異なります。(物語の流れ、登場人物、結末等の骨子は変わりません)】
石油資源が突如として枯渇し、いとも容易く世界は崩壊した。
生活基盤を失い、途方に暮れる人類の前に突如現れた夢のエネルギー増幅結晶体《アゾット結晶》。その研究のために、人類は持てる力を振り絞って世界五か所に実験都市《アイランド》を作り上げる。しかし、アイランドは大きな問題を抱えていた。一番目の実験都市《アイランド・ワン》へ、全アイランドの統括管理をしている非政府機関〝スピネル〟の治安維持部隊員として、〝千寿幹耶〟は、特殊な能力を持つ『アンジュ』のみで構成された清掃部隊(スイーパー)の一員として配属される。その主な任務はアイランドを狙うテロリストの殲滅、そしてアゾット結晶により生み出される〝ポリューション〟と呼ばれる怪物の除去だった。
配属初日に大型ポリューションとの戦闘を経験した幹耶は、それが何かしらの目的の為に、人為的に製造された物であった事を知る。
幹耶たちは調査を進めるうちに、頻発しているテロとの関連性や、巨大民間軍事企業〝アーマード・エレメント〟。そしてアゾット結晶に関する、非人道的な実験を繰り返して解体されたはずの〝バルミダ機関〟が関与している事を突き止めた。複数の勢力による思惑が絡み合う中、幹耶たちが事態の全容を把握する前に、アイランドの要石である《マザーアゾット》を狙った大規模テロが発生してしまう。
一勢力が《マザーアゾット》を保有する事は、世界の力の均衡を崩し、やがて大きな争いを生み出す。本当の敵も解らない中、果たして幹耶たちはこの事態を乗り越える事ができるだろうか――。
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石油資源の枯渇、という、現代社会を根本から破壊した世界を描き出そうとしている、溢れんばかりの情熱に満ちた作品。ここまでの情熱を感じる近未来作品は、一つしか覚えがありません。そう、ウフコックが生きる、あの世界です。この名前を見てあの世界を思い出し、かつそれを好むのなら、この作品は、あなたに出会うべくして生まれた作品と言えるでしょう。異世界ではなく、現代でもない。経済から人類の動向、その後に起こる様々な問題に至るまで、全てを緻密に練り上げねば描けない世界を、作者は描き出そうとしています。洋画の如く、皮肉に満ちていながらも嫌味ではない会話の数々と、魅力的な狂気を宿す登場人物。楽しく、明るく、表面だけをなぞる薄っぺらい世界の小説に飽きたなら。世界の底に流れる悪意を抉り出して突き付けるような、強烈に〝己〟を持って生きる人々が住む世界が、そこで待っています。