雑種の少女の物語 完結日:2016年11月28日 作者:東雲佑 評価:★★★★☆ 4.3雨の夜、陵辱された少女は狂気に取り憑かれて街を去る。 精神の抜け殻となってさまよい歩いた少女は地下迷宮と化した古代都市へとたどり着き、狂人のまま魔物たちの姫君として祭り上げられていく。 (全八回) 話数:全8話 ジャンル:アドベンチャー 登場人物 主人公属性 女主人公 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 人外 注意:R15 残酷な描写あり なろうで小説を読む
読み手の皆様へ陰惨な導入部は、醜悪な人の本性を暴きだし、魔物の姫へと祭り上げられる少女に希望など微塵もなく、畏怖の念が身に染みて伝わります。その世界を構築している言葉選びが秀逸で、読み手を一気に引きずり込みます。読み進めると一縷の光が照らしだし希望を胸に秘めます。登場する全ての魔物は慈愛に溢れ、少女に親心、友情、崇拝を抱き守護するのです。虜になったらもう戻れない。気がついた時には全てを読了している筈。悍ましくも愛おしい、そんな儚い世界へと皆様を御招待させていただきます。
恐怖と絶望に蹂躙された少女は、狂気を供に魔の森へと迷い込む。「語り部」の穏やかな語り口とは裏腹に、物語の始まりはあまりにも衝撃的です。控えめな描写にもかかわらず、なまじ文章が流麗なだけに、おぞましい出来事はするすると脳内に注ぎ込まれ、脳裏に結ばれる情景は目を背けてしまいたくなるほど。ですが、仄かな明かりがひとつ、ふたつ、と地下迷宮の中に灯り始めるにつれ、みるみるこの物語の虜となってしまいました。闇は光に、不幸は幸せに、恐怖は愛に。白虎や山羊頭といった魔物達が本当に素敵で。いわゆる冒険者として相対したらば、死ぬほど恐ろしい敵のはずなのに。人間と魔物、異なる二つの価値観のはざまで穏やかな日々を送る「雑種の少女」の可愛いこと。やがて運命の歯車が軋みながら回り、物語は容赦なく終焉を迎え、そうして気づくのです。誰もが――読者であるはずの自分さえもが――物語の登場人物となっていたことに。