評価:★★★★☆ 4

 華奢で人生に絶望したナツメは飛び降り自殺をして死の世界へ旅立った。ところが死んだ後に異世界の神を名乗る名も無き神に自分の世界を救ってほしいと頼まれる。しかも願えば無限の金を持って、不死身の肉体を持って、無敵の力を持って転生させる。願いの制限は一切ないと。
 うますぎる話だが理由があった。たとえ無敵の力を手に入れようと、不死身の肉体を得ようと、転生先の世界を壊す存在には通じない、でも、だからこそ願えと。今は時間が無いと。
 真剣な気迫に、僕には無理だと断るナツメだが神は有無を言わさず転生させる。
 その世界は、中世ヨーロッパに近い世界だった。しかし数多なる転生者によって、様々な思想、政治、宗教、そしてチート武器やチート能力を持つ英雄たちが蔓延るカオスな世界であった。そしてその中に、新選組一番隊隊長沖田総司、ローマ初代皇帝アウグストゥスといった実世界で死んだ英雄が居る事だった!
「彼らが居れば僕は必要ない」
 そう割り切ろうとするナツメだったが心の奥底で思うところがあった。それを押し殺す様に思い込む。
「まあ、また死ねばいいだけだし、死にたくなるまで生きてみよ」
 そんな自虐的な生活を続ける中、ある老人と出会う。
 老人は辛辣な態度をとるが、ナツメの今までの経験に比べればはるかに優しいものだった。だからナツメは老人と暮らした。
 それからしばらくするとナツメと老人は自然と仲良くなっていた。そして老人は言った。
「確かに彼らは英雄だ。でも彼らはワシに一杯のコーヒーも運んでくれない。一言も口を聞いてくれない。一度もワシの傍に居ない。一度もワシの世話をしない。お前だけだ。お前だけがワシの傍に居た。ワシにとって、お前は英雄だ。だから、シャンとしろ」
 老人の笑み、それに突き動かされてナツメは立ち上がる。
「せめて、シャンとしよう。英雄に成れなくても、たった一人に、英雄だと言ってもらえるように!」


話数:全49話

登場人物
主人公属性
職業・種族
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時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録