評価:★★★★☆ 4.4
一には、強い絆で結ばれた恋人がいた。
「わたしは、あなたの妻なのだから」
遠く離れても、一途にその背中を追い続ける「てい」。
何があっても伸ばした手を諦めない「てい」の思いは、報われるのか。戊辰戦争の時代を背景に、繋がり続けようとした2人の軌跡。
斎藤一 恋愛譚!
幕末を駆け抜けます。※改稿したものをエブリスタ様でも公開はじめました。H30年7月9日~
話数:全108話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:R15
『はじめの妻』が文芸として重要な位置を占める点は、女性の日常視線で幕末を描き切ったというところにあると思います。幕末モノの小説といえば、尊王佐幕に分かれて国家・政治など「大きな物語」を牽引する男たちの生き様を描いたものがほとんどです。それはそれで面白いのですが、その一方で、幕末にも自分たちのような人間の営みがあって、みんなせっせと井戸水を汲んだり洗濯したりご飯を作ったりしていたわけであります。そのような、あくまで一般人としての主人公が大きな歴史の流れにのみこまれてゆくところに、共感や感動、小説を読む醍醐味がありました。この構造を支えるのが、江戸後期の暮らしについての筆者の豊富な知識量だと思います。村上春樹の「壁と卵」のたとえ話にあるように、国家・政治というシステムの壁に叩きつけられる卵を描くことこそ文芸だと思います。主人公の純愛が歴史に負けていないところが、素晴らしいです!
先ず、読んでみて一番最初に感じたのが作者様の知識量の豊かさです。この作品を書き上げる為に、一体どれだけの時間、どれだけの資料等を調べられたのか、想像するだけでも気が遠くなってしまいます。また、それらの調べられた事柄が決して無駄にはならず、全てが作品に活かされ、反映されているのが素晴らしいですね。史実は、やはり前提として事実が存在しているのでその事実から余りにも変えてしまったり、道筋から外れてしまったりすることが出来ない為、肉付けするのはかなり大変かと思いますが、この作品は肉付けをしたことで更にその史実を活かしている様に感じます。また、その肉になっているのが恋愛というのも非常に花を添えていると思います。史実と融合して、純粋で美しい、しかし何処かしっとりとして艶もある、そんな素敵な大人の恋愛も匂わせる、素敵な物語になっていると思います。
新撰組。いくら歴史に疎くとも、その名を知らぬ人はいないだろう。様々なメディアで形となり、今もなお色褪せない題材だ。この話は、そんな新撰組の隊長となる男「斉藤一」と、幼少の頃から縁で結ばれ、妻として生きると決めた一人の女性「てい」の半生を語るもの。幕末の動乱の頃である。血なまぐさく、戦いの派手さに目がいってもおかしくはない。しかし、語り部はあくまでも「てい」であり、市井の人である彼女自身が見聞きしたものしか語られない。それゆえ、地に足のついた丁寧な語りと描写が重い説得力を読者にもたらす。それがこの物語のたまらない魅力だ。一人の男の背を追いかけ、歩む道に沿い、時に問いかけながら、途切れぬように握り続けた縁を取り巻く時代のうねり。彼女が見た人々の生き様は、時に笑いをさそい、泥臭く、鮮やかで力強い。創作と侮るなかれ。これは史実と向き合い、大切に紡がれた一つの歴史なのだ。
物語を読むという事はどういう事だろう? 人の人生を読む事で、自分の人生と重ねたり、自分の人生に活かしたり。それは人それぞれかも知れないが、どちらにしても私達は、映画や小説の中の物語から何かを学ぼうとはするだろう。 そしてそれは簡単に言葉にして表す事の出来るものかも知れないし、言葉には表せないものかも知れない。 こちらの小説は、後に新撰組の斉藤一の妻となる女性の目を通して見た、一の生き様と動乱の世である。 作品はあちこちと、優れた表現も見受けられ、読み応えのある長編時代小説になっています。 しかしそれ以上に、言葉にならない感情に揺さぶられる事が何度となくある、生身の人間を描いた小説だと思います。 こちらのレビューで興味が湧いた方は、是非一度読み始めてみては? 読了後、「読んだ…」という実感の湧く小説です♪
新撰組の物語は、すでに世の中にいろいろある。でもこれは、その中のひとり、無骨で寡黙な彼を愛した、ひとりの女の物語。その不器用、無愛想な少年を、少女は一途に愛しぬく。下調べに何年もの時間を費やし、じっくりと大切に紡がれた物語。史実を踏まえてしっかりと骨太でありながらも、実に女性らしい色鮮やかな筆致で、当時の文化を垣間見させてくれる。それがたまらなく新鮮、かつ魅力的だ。霙(みぞれ)まじりの京の空気と水の冷たさ。新撰組隊士たちの息遣い、人柄、そして生きざま。読んでいると、試衛館での彼らの笑い声までが聞こえてくるよう。そして、会津籠城戦のむごたらしさ。女性ならではの視点で描かれる幕末は、まさに読者の肌に添うようなリアリティを放っている。完結まで、あと少し。皆様も、是非とも一緒にフィニッシュを迎えて欲しいと思います。
新撰組三番隊隊長「斎藤一」色々な創作物で、知られる彼。そして、それを支えた妻「てい」その二人を「てい」の丁寧な視線で語っていくのがこの物語。まるで、近所に試衛館の人々がいるかの様に。まるで、新撰組の面々が、ふとした時の知人の様に身近に感じられる程に、丁寧に描かれたこの作品は、必ずやあなたを虜にします。あの動乱の時代の中で、彼ら彼女らは何を感じたのか。まるで見てきたかの様に感じられる。150年前に、彼らは生きていた。その生き様を蘇らせたかの様なこの作品。歴史好きの方も、そうでない方も、きっと楽しめる。なぜなら、彼ら彼女らも、私達の様に息づいているのだから。