評価:★★★★☆ 4.2
元詐欺師の女がいる。元、だ。……じゃあ今は、誰なんだろう?
「ずっとずっと、歩いて来たんだ……そうしたら、わたしはわたしが今誰なのか、わからなくなった」
幼い顔をした彼女が、その深い深い黒い眼をふわりと上げた。
「わたしがわたしを捕まえる。―――そうしたら、この逃亡劇はきっと終わり」
どうかな。そう簡単に、君は捕まりそうにない気がするけど。灰色の眼をした彼との時間が過ぎ、黒髪の青年と離れ海と空を越えた彼女は、心の底から疲弊したまま『逃亡』をはじめていた。
血の繋がらない弟、腹に一物抱えたカメラマンたち、送りようのない手紙を抱える学生、スランプのモデルに雨と霧の街の保安官。彼らの眼の前に、或いは誰かの心の先に、彼女は通りかかり、そして去って行く。嘘と詐欺のあとに、残ったものの話をしようか。
大丈夫。怖がっていていい。
この手をしっかり握っていて。
これは君が逃げた跡であり、君がどんな風に世界を愛していたかという話なんだ。大丈夫。これだけは言える
だからきっと覚えていて。お守りのように胸に刻んでいて
君はすべてを失くしたわけじゃないんだ君がいる。君がいた。
―――その世界を、愛そう。―――前作、『マクデブルクの半球』『アステリスクの邂逅』『セントエルモの光跡』の続編です。
どうぞ、前作を読まれてからお読みください。
話数:全148話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
その他要素
注意:R15
