時を越えるブルーの夜は忍び寄る 完結日:2017年2月13日 作者:香月よう子 評価:★★★★☆ 4.1夜の闇は濃く深く、朝は果てしなく遠い……。 詩集「碧いおもちゃ箱」シリーズ第一弾。 テーマは「夜」。 話数:全2話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 夜 日常 苦悩 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
夜の闇、孤独、倦怠をテーマにした詩の作品集。作品集といえども、それぞれの詩を読むというより、全体でひとつの流れになっているので順に読んでもらいたい。レビュータイトルに書いた『漂泊の夜』、このタイトルの詩が、作品を読むうえでのひとつのターニングポイントではないだろうか。文語的な言葉、堅い表現の多い詩のなかで、私はこの詩が妙に柔らかく、それゆえの切なさ、感動があるように感じた。それは、「私」という単語のせいかもしれない。この詩集のなかで、一人称は「自分」「我」「己」などだが、この詩を契機に以降四度ほど「私」という人称が登場する。言葉でうまく説明できるものではないが、この人称が繊細な詩の世界に与える影響は特筆すべきものだろう。ってことで、オススメです^^
この詩は、碧いおもちゃ箱というシリーズの中の一作である。テーマは「夜」濃くて、深い闇の中にある、夜。そんな夜を過ごす、女が感じた言葉たち。時に切なく、時に寂しく、夜があけるまで、女は考える。この暗闇のなかで、女は愛されたいと思う。抱き締められたい。側にいてほしい。美しくも儚い言の葉を、是非あなたにも読んでもらいたい。
ここには確かにおんながいる。澄んだ瞳と熱い心を持ったおんながいる。おんなは温かく柔らかい体で愛する人を包みたいと願う。おんなは愛する人に力強く抱きしめられたいと望む。おんなは一人寝の夜、愛するおとこの体を夢想する。たとえ熱い抱擁におぼれて命を失っても後悔しない。濡れた唇が唇を求める刹那が恋しい。汗ばむ肌と肌がベッドに軋む音を聞きたい。おんなは言う。わたしの心と体はわたしだけのものではなくて、大切な人にすべてを捧げるためにあるの……と。おんなはおとこのすべてを知りたい。おとこのすべてがほしい。おんなは、おとこのすべてを賭けて自分を奪ってほしいと願う。おとこは答えない。何も言わない。おんなは、たまらなく切なくなる。切なさから、詩が生まれる。ここには、ひとりの生身のおんなが、確かに存在する。