評価:★★★★☆ 4.1
『あんな辛い思いをするくらいなら、恋なんか絶対にするもんか』
幼い日のトラウマから、そう心に決めた26歳独身、彼氏いない歴=年齢の森山志乃。筋金入りの男性不審な彼女の心を変えたのは……
犬のように人懐っこい男だった!?町役場の職員である彼は、志乃にとって思い出の深い閉館間近のプラネタリウム解説員も兼業していて。
プラネタリウムや何気ない日常を通して二人は関わり、徐々に距離を縮めていく。こじれ女と犬系男の、砂糖のように甘く焦れる恋物語。
※2017年3月14日 完結しました!
話数:全29話
ジャンル:仕事もの
時代:未登録
舞台:未登録
注意:R15
この作品はめっちゃリアル。舞台設定は現代日本で、主人公は26歳独身女性。そんな主人公の一人称で語られる物語の冒頭は、彼女の悩みがまずリアル。仕事忙しい。給料も安いし、夜勤もあって美容にも気を使えない。職場には苦手な人もいる。そんな主人公が、幼い頃によく通っていたプラネタリウムの近くを通りかかると、近々閉館することを知る。あーあ、思い出の場所までなくなってしまう。うわーー! やめろつらい! 現実すぎる!!と、絶望的な状況からスタートするのですが、そのプラネタリウムの近くで、一人の男性と出会います。主人公の凍った心に、人懐っこい笑顔でスッと自然に入り込んでくる、まるで子犬のような男性。優しく気を使ってくれて、可愛い一面もあって、でもちょっとずる賢くもあって。騎士様でも王子様でもないけど、読んだ後に「現実も悪くないかも」と思えるハッピーエンドな恋物語です。
情景描写をさせても仕事の悩みを書かせても唸るぐらいうまいッ!作者の力量にひれ伏しました。一旦読み始めると止まりませんでした。二人の男女が出会い、すれ違い、それでもなお引き合う。使い古されたテーマをここまで新鮮に書けるなんて、信じられません。出て来る登場人物が確かにそこにいるのです。私達の隣に。これだけ人物を表現できる人はなかなかいません。普通はどうしても作り物になってしまうものなのです。心が一杯になる感動の物語をあなたも読んでみませんか?
あくまでも個人的な話なのだが、俗に言うラブコメディ作品ばかりタッチしてきた。それは自作品を扱う上でこっちの方がいいなぁと思ったからなのだ。この作品はそんな私が久方ぶりにいいなぁと感じた。あらすじに、焦れったい、という言葉があり、はてさてどのような焦れったさなのかと腕を組んで読み始めたのだが、なるほど。丁寧に描かれた信頼していく過程が良い。何気ない動作などに信頼が増していく様子はなるほど、確かにこれは焦れったい。派手なアクションも、濃い心理描写も無いが、だからこそ安心して読むことの出来る丁寧な恋愛小説だと、私は考える。