評価:★★★★☆ 4.2
威圧的な人相だが寡黙で誠実な剣士、男振りの良い外見だが性格のねじくれた魔法使い。あてどない旅の途上立ち寄った都市で二人は、新月の晩に出没する魔物の話を耳にする。その魔物に娘が狙われているという宿屋の主人からの依頼を受け、彼らは調査に乗り出すが……恋愛要素は添え物程度で控えめ、青年二人がメインです。以前別名義で書いた「もう一振りの剣にまつわる挿話」を改訂したものとなります。
話数:全14話
ジャンル:アドベンチャー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
読み始めて数項で、これは何かを途中から読ん出るのか?と、思い始めた。この感じ、これはもしかして名作の予感。世界観の練り込みがしっかりしていてそれでいて、なにも語られない。説明は最小限、読み進め彼らと共に旅をして始めて小出しにされる情報。それでも足りない。謎に全て答えが出ない事が、より世界の息吹きを近くに感じさせてくる。そう、理不尽が楽しい。何より卓越した文章力のなせる技。読み手によっては敬遠するだろう。率先して倫理に違反する主人公に辟易する物もある、だが此は凄い作品だと、胸を張って言える。だって今現在、感想の数とレビューの数が同じなのだ、これがいかに凄い事かは分かる人には分かるはず。
登場人物の謎が、説き明かされていく様は、戦いの最中でも静謐な感じで、その世界にぐいぐいと引き込まれていきます。予想とちがって人物が残酷なところがありますがどうしてそうなったのか謎が明かされるような、しかしすべては明かされないもどかしさにひきつけられます。この作者様の作品はなろうでは少ないようですが、一度読みはじめたら止まらない素敵な毒を持っています。時間があるときに読みはじめるのをお勧めします。
変わった風体の二人が訪れたある街で、凄惨な殺人事件が起きていた。殺人現場で『灰色の犬』を見たのだという宿屋の娘の言葉を頼りに、寡黙ながら正義漢の隻眼剣士『雨』と、飄々としながらも人格の破綻した魔法使い『雷』のコンビが、それぞれ街や遺跡で調査に取り掛かるが……?事件はどんどん深刻な事態になり、登場人物たちは当初とは異なる展開に翻弄されることとなる。ここまで書くと推理物のようだが、途中からはがらりと雰囲気が変わり、バトルモノのそれに。魔法使いがかなり癖があるのでそこがストレス要因になるかもしれませんが、後半になるとそんな部分ですら彼の「らしさ」のように感じられるようになります。テンポのいい掛け合いと、謎と含みのある主役二人の過去、そして想像をいい意味で裏切る展開の数々は、そういったものが好きな方にはたまらない逸品となるでしょう。お勧めの作品です。どうぞお楽しみあれ。