評価:★★★★☆ 4.1
親兄弟には先立たれ、友達もいない。話し相手は愛犬しかいない天涯孤独な社会人、三浦誠司。
愛犬の散歩以外には一歩も外に出なかった、休日の午後。
キッチンで煮込み料理を作っていたところ、前触れもなく、リビングの天井からドレスを着た女の子が降ってきた。
人形のように可愛らしい彼女は、シルヴァラッド森林王国の第三王女ミューラと名乗り、転移魔法の実験に失敗して見知らぬ土地に現れたのだと言う。
しかも、魔力が切れてしまい、地球は魔素(マナ)が薄く帰れない。
110と119のどちらに通報すべきか迷う誠司だったが、空腹を訴えるミューラに料理を食べさせたところ、魔力が回復。
理由は分からないが、誠司が作った料理には魔力を回復させる作用があるらしく――二人と一匹の同居生活が始まった。
これは、ひねくれ者の青年と純真無垢なお姫様の心が触れ合いそうで触れ合わない物語。※本編完結しました。後日談を不定期に更新予定です。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
異世界からお姫様がやってきました。 帰るための魔力を溜めるには、主人公の料理を食べる必要があります。 内容を削りに削って説明すると、たったそれだけ。 ものすごい料理が出てくるわけでもない。 手が込んでいると言えても、日常的な、ごく普通の家庭料理だけ。 非現実的なリアクションがあるわけでもない。 色気より食い気優先なお姫様は、幸福そうに食べるだけ。 料理が誰かの生き様を、国や歴史を変える、縁の下の力持ちになるわけでもない。 犬と戯れて、小説を読んで、だらけて、料理して、食べる。 言ってしまえば、たったそれだけの繰り返し。 けれども、それこそがこの作品の魅力。 驚きや冒険や奇跡がなくとも、変わらない日常の積み重ねこそが人の幸福なのだと、この作品はそれとなく伝えてくれる。