評価:★★★★☆ 4.2
「ねえ、知ってる? 眠れない夜は、桃色のペンでうさぎを描いてから枕の下に入れて眠ってごらん。びっくりするくらいよく眠れるんだって」
最近流行りのおまじないを試してみる主人公たち。彼女たちは、そんな子どもだましの「おまじない」に頼るくらい追い詰められている。
母親に虐待され、恋人に捨てられ、友人に裏切られ。
そんな傷ついた主人公たちを、桃色のうさぎは決して拒んだりはしない。桃色のうさぎは、絶対に助けてくれる。彼女たちが、自分自身を取り戻すまで。
※この作品はアルファポリスにも投稿しております。
話数:全10話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
皆さんはホラーって聞いて、どんなお話を想像します?おどろおどろしい幽霊が出て来る話?グロテスクな怪物が出て来る物語?最近だと、理不尽なデスゲーム系の話かな?でもね……、私はそれよりも、もっと恐ろしいものがあるんですよ。それは人間の心。それも狂気に満ちた快楽殺人者のような心じゃなくて、普通の人々が抱えている、小さな小さな歪み。誰もが心の中に持つ、ちょっとした心の闇が、目を覆いたくなるような物語を紡ぎ出してしまうのかもしれません。これは、そんな恐怖をジュースにして、読者の胃の中に流し込んで来るような物語。
さあ桃色うさぎの絵を描いて、枕に敷こう。虐げられた子供だけの楽園、ドリームランドの門が開く。桃色のうさぎたちは、傷ついたキミを、きっと優しく、もてなしてくれる。風船をもらって、恐れずランドに踏み込もう。その先にあるのは、ここだけの仕返し、ここだけの逆転、ここだけの真相。……ここだけの幸せ。子どもの見る夢が、いつも明るくて、幸せなんて、大人がつくった大ウソだ。非力ゆえに、もの言えぬがゆえに、痛みをいっぱい抱えた魂たちを、光だけで救えるものか。正義も悪も、光も闇もゆれ動く。このランドを去ったあと、きっとキミは少しだけ優しくなれる。……ずっと留まりたいというなら、それも止めはしないけど。
ひと目だけ見れば、なんだかメルヘンチック。通して読めば、様々なことを考えさせられる。のっぴきならないこと。ほんとそうだね。いろいろなこと。流石にそういうことは数多くあるとは思いたくないけれど。眼界なきことだからこそ、恐ろしいことで。時が移りても癒えぬ傷。弱きものたちには、桃色うさぎとの噂。メルヘンでもありホラーでもあり。類する心の業の深さでその差はあれど。悲しみにほんのりと希望を振りかけてくれるという。なんにせよ、そのしごとは心寂しく切なく思う。都市伝説のひとつらしいよ。夜のうさぎ。桃色うさぎ。これを読むといろいろと考えることが出てくると思う。
真夏に相応しい、ぞっとする話。ただ、ある人にとっては読むのが辛い作品かもしれません。私がもう少し若かった頃なら、途中で読むのを止めたかもしれません。たとえこの話に出てくる状況を具体的に体験していなくても、人から不当に悪意をぶつけられた経験があるのなら、多かれ少なかれ読んでいて辛い話かもしれません。人にとって恐ろしいのは、人。人によってのみ人は心を傷付けられ、引き裂かれるから。傷付き、歪んでしまった己の心のいびつさ醜さと対峙するほど恐ろしいことは、一個人としてなかなかないかもしれません。でも人が救われるきっかけを与えてくれるのも、やはり人。読み終わってそうも思いました。痛みを知るうさぎたちがきっと、あなたを穏やかに包んでくれることでしょう。眠りの底から立ち上がるか?夢の遊園地に残るのか?決めるのは、あなた。
本当に怖いもの、それはあなたにとってなんでしょうか? 幽霊的ななにか? そう思って、これをまだ手にしていない人はいませんか?本当に幽霊が怖いですか? それ以上に怖いものって、あなたの身近にありませんか?そうです。あなたの心の奥の奥。そこに眠っている感情、あなたにとって思い出したくない過去のすべて。怖くありませんか? つらくありませんか?この作品を読んで、とにかくゾッと背筋が寒くなるのを止められませんでした。だって、自分の心の中にもこんな闇が渦巻いているのかもしれないから。ああ、そうです。それなら、桃色のうさぎの絵を描いて、枕の下に入れたら、こんな思いも消えてなくなるのか――と、思わずペンをとってしまいたくなる、ぐっとえぐり込まれた心理描写は見事!怖いもの見たさで覗きません? そうですね。あなたの本当の心の奥底ってやつを――その先にきっと答えが待っているから。
再度、警告のこと。引きずり込まれる恐れがあるため、深夜この小説の閲覧を禁じます。あらすじ①悪夢「虐待および被虐待」②悪夢「絶望ののち希望」③悪夢「空虚、以上」④悪夢「常軌の逸失」⑤悪夢「生理的暴力」⑥悪夢「 」 7つの大罪まで、あとひとつ。⑦番目に、どんな悪い夢が待ち受けているか、どうか各自様にてご確認のこと……なお!くれぐれも念のため。深夜零時から夜明けまでの間、この物語を読むことを禁じます。