評価:★★★★☆ 4.3
月明かりの下、深夜に一人で煙草を吸うのが趣味だった主人公は、同じように煙草を吸う女性に出会う。
夜空の下でのみ、一服の数分間の時をともに過ごす二人。
逢瀬を重ねる度に主人公は彼女へと想いを馳せるようになっていく。
しかし彼は知っていた。
その恋心は決して抱いてはいけないものなのだと……。※喫煙描写が数多くあります。ご了承ください。
※カクヨムの方にも掲載しております。
話数:全5話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
この作者は恋愛というものを、よくわかっている。文学における恋愛の浪漫とは、一種の逃避であり、現実から「逃げる」ことにある。恋愛は決して現実を豊かにする為のツールなどではなく、誰も触れない二人だけの国を作って、そこに酔い痴れるものなのだ。現代的価値観とは違い、そこに無垢な綺麗さはない。この小説における恋愛は、まさに逃避であり、現実と非現実の境界を演出する。しかし、この物語で最も興味深いのは、その逃避が主人公とヒロインで共有されていないことだ。主人公はやはり現代人らしく、恋愛に対してリア充的な発想を持っているのだが、ヒロインはそうではない。ヒロインにおける恋愛は、やはり文学において伝統的な”逃避”的価値であり、それが主人公の現代的な”ツール”としての恋愛観と矛盾しているのが、本作品最大の肝である。もしかするとこれが、新しいロミオとジュリエットの形なのかもしれない。
非常にコンパクトにまとまった作品であり、その中で作品の魅力を最大限に引き出した意欲作だと思います。胸がドキドキするような恋ではなく、主人公がヒロインに抱くもどかしい感情――それは便宜的に言って「恋愛ゲーム」というものなのかもしれません。実際、ヒロインの行動や反応はそういった側面を匂わせています。 しかし、その「恋愛ゲーム」が見せかけのものだったら。本当は何かを隠すための虚栄だったとしたら。 けれどもそれもまた勘違いなのかもしれません。 結末の紫煙は、一体どこへ吹かれていったのか。 切なさに胸が疼く良作でした。一読をお勧めします。
喫煙のためふとベランダに出た主人公は、月明かりに照らされる女性と出会う。その日限りの邂逅だと思っていたが、逢瀬を重ねるたびに主人公の想いの身の丈は募っていく。しかしその女性は、恋人を持っていた。 恋なのかなんなのか、前にも後ろにも進めず今日も煙草をふかす主人公は、またあの女性と出会う。 悲恋か、実りある恋路か……。 今後の展開を楽しみにしましょう。