評価:★★★★★ 4.5
古くから、巨大転移陣が不規則に現れる帝国。厳重に管理される転移地“ゾーン”に、侵入を試みる少女がいた。彼女が目指すのは、最新のゾーンである日本の地方都市・伏川町。
転移現象は街の日用品を魔具に変え、少女レーンと転移した朝見涼一は、手に入れた武器を駆使して戦う。
ドラッグストア、コンビニ、おもちゃ屋さん、生き残りに必要なのはどこだ?※「カクヨム」でも連載しています。
※ 2018年10月、改稿しました。
話数:全102話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
典型的な異世界ものとはちょっと違う独特な世界が、時にはシリアスに、時にはコミカルに描かれている。異世界転移に巻き込まれた涼一が戦う相手はゾンビに蜂、カラスから始まって、やがては強大な帝国を相手に……そんな彼の武器は殺虫剤?電池?アイテムの使い方が最高。そしてとにかくカッコいい。2回目読んでの感想です。同じ世界観の別の話も書かれているので、それを今から読む予定(2回目w)。何度も読みたくなる話って、貴重ですよね!
はじめは、転移に戸惑う主人公が帝国や魔物に対抗するアクション物だと思って読んでいました。話が進むにつれて、転移そのものの謎を背景に、どんどんスケールが大きくなります。物語の所々にあった気になる記述も、後半には解明されていき、「あぁ、あの時の話がこうなるのか」と、何度も思わされました。如何せん、記憶力が乏しいので辛い時もありましたが…。登場キャラクター達の気軽な会話などは思わず笑いが出ることも多く、殺伐としてるばかりではないのも読みやすい理由でした。ちょっと変わった転移物が読みたい人に、オススメです。
作品導入部分では、街規模の転移地を舞台にしての潜入と脱出が描かれています。ホラーのような雰囲気に、少年漫画のような魔物とのバトル。帝国兵が現れてからは、戦いもエスカレートして、緊迫感溢れる逃走劇が始まります。スピーディーで簡潔な描写の、この第一章もいいのですが、この作品の真骨頂は、主人公の反撃が開始される第二章、そして意外な展開を見せる第三章でしょう。チートも無双もできませんが、知力を尽くして戦う主人公と仲間の物語には、思わず引き込まれます。カイロや殺虫剤といった身近な道具を魔法物として使う姿は、緊迫感もあり、時にはユーモラスでもあります。後半、クスクス笑いが漏れるようなシーンも挟まれ、一気にラストまで読めました。もう少し読みたいと思う幕切れでしたが、伏線のあれこれは綺麗に回収されて、読後感は爽やかです。作者による別作品が始まっていますが、続編、期待したいです……