評価:★★★★☆ 4.3
僕は将来、婚約者を捨ててヒロインて子と結婚して幸せに暮らすそうだ。婚約者は悪役令嬢だそうで、最後には処刑されてしまうのだって。だから彼女はそれを回避する為に色々やってるみたい。でもちょっとやり過ぎてて、僕は見捨てられてしまいそう。なので、同じ世界からきたアクマが手を貸してくれるし、僕も自分の平穏な生活の為に色々頑張ろう。
乙女ゲームに酷似した世界に転生した人々と、その所為でちょっと色々壊された攻略対象の王子様の話。王子様は異世界のアクマと共に、周りの人々の心を堕とします。だってそうするとアクマが喜んでくれるから。
※アクマは男にも女にもなれますので王子様は前も後ろも上も下もアレしてます。そんな王子様とアクマの目指せ淫蕩堕落平穏生活。
話数:全63話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
よくある悪役令嬢のテンプレをベースに非常によく練られた話。伏線の配置と回収がすごい。Aがまいた種にBが水をやり、Cが肥料をやり、登場人物が絡みあって大きな歪みの花が咲く。そして、登場人物が全員いい感じのゲス。ゲスいのに各々ゲスなりのハッピーエンドを迎える点がすばらしい。(一部除く)特に最後のジェラルド視点とルチアーナ視点が、物語の補足としても、追い詰められる対象者の独白としてもよくきいている。常に優位にいることを当然とするジェラルドが、レオナルドとカラの導きで本当の自分を見つめ直す。ルチアーナは、「自分こそが目の前が見えていないヒロインのようになっているのでは?」と自問するも、ルチアーナ本人やレオナルドを含めた登場人物たちが回し始めた歯車は止まらない。そして、恋愛結婚にこだわる彼女が、結局誰にも恋をしていないところが面白い。
群像劇然としている、とにかくバランスの良い作品。ゲームを下地にした異世界転生・学園・政治闘争・ミステリー(各キャラがどのような闇を抱えているのか)・インモラルが上手く練り込まれていて、淡々としているのに飽きさせません。特に視点の切り替えが巧みで、主人公視点ではやや物足りなく感じる部分をそれで補足していくのが読んでいて気持ち良いです。ストーリーにパワーがあり、特に好きなキャラができなくとも話の先を知りたいが為にどんどん読み進めたくなります。ラノベ特有の快感や面白さが、小説のいろはに綺麗に収められていると思います。おススメです。
主人公が、捻くれていて嫌な気分が続くのだが、その捻くれた見方は、時に自分も陥りがちになる捻くれた感情ではないのかなと思う。読み進めている間は、ザワザワと心を引っかき回されるような気分であったが、読むのを止めることが出来ず、最後まで読みきった。読み終えるとサッパリとした読後感で、面白かったと言える。これは話の内容は全く違うけれど「華麗なるギャツビー」と同じ爽快感があった。
物語の視点が一人称にしろ三人称にしろスポットライトが当たっている部分でしか事象を知ることはできない。しかしスポットライトが当たっていない間の脇役たちも次の出番まで待機しているわけではない。各々の思考によって動き続けるのだ。苦悩するのだ。足掻くのだ。悪役として断罪されるという物語の結末から逃れることに目をとられた婚約者達に、一人の人間として顧みられなかった王子が今、悪魔の手を取り立ち上がる。
只者ではない作品です!悪役令嬢が活躍する物語は多々あれど、反対側の王子様がクローズアップされた作品は、なかなかないと思います。簡単に言えば、婚約破棄される悪役令嬢が、生き残りを賭けてあれこれ対策をかける裏で、その相手の当の王子様は裏では何をして居たか?という事を解き明かしている作品です。読み味も、サクサクと読み進められるのですが、全てのキャラクターが「捻くれている」のが、生々しいというか、何というか、心の奥底に抱えている闇、妬み、恨み、それらが原動力になっているのが、素晴らしい書き味となって、次はどうなるんだろう?どうするんだろう?と、読み進めてしまいます。最後にはどんでん返しも持ってきて居て、起承転結の基本を抑えた作品、有終の美もしっかり飾っているところは、見事の一言です。癖のある話なので、万人向けの作品ではないですが、是非一度目を通されてはいかがでしょうか?
いわゆる悪役令嬢・婚約破棄物の派生ではありますが、王道とも邪道とも少し距離の置いた作品かなと思います。ほかのレビューでも挙げられているとおり、まず主人公の性格がイイ感じに歪んでいます。そのほかの登場人物も歪んでいます。そして、悪魔と一緒にいる主人公が手を加えることにより広がっていく歪み。劇的なことはあまり起こらず、むしろ淡々とストーリーが進んでいくことで、さらにその異常さが強調されて、そこに潜む毒がたまらなく美味しい。また、ざまあ要素もあります。終わり方もよかったです。主人公の行動に一本筋が通っていて、納得のいく最後でした。一部同性愛の表現もありますが、苦手な私でも抵抗なく読めました。普通の作品を読みたい方にも薦めたいですね。作品の長さも本編で全63話と、普通に方ならまあ2、3日あれば何とか読めるかなといった具合で(速い方だと1日で読めそう)。気楽に読みたい人にはいいと思います。
キーワードには怪しげな文面があるが、限りなく激臭な感じに匂わすにとどめてあるのでなんの問題もないですね。主人公が気弱な設定でこんなにも引き込まれる作品は珍しいと思います。まあ、主人公を含め皆さんネジが100本ちかく飛んでしまっていて、それでいてそれを静かに行うものだからギャップが凄かったのですかね。読んできて非常に愉しかったので一気に読んでしまいましたが、じっくり読むべきだったなと反省中。サイドストーリーとかあと数話ほど読みたいところです。
乙女ゲーを下地にした閉ざされた世界ヒロインとして生を受けたもの悪役令嬢として生を受けたもの攻略キャラとして生を受けたものモブとして生を受けたものそれぞれの生存戦略が面白い。どこまでが偶然で、どこまでが策略か自己愛利己愛執着妄執汚泥の中のひとすくいの純愛も他人からみれば酷く歪んでる小さな箱庭の中でもがく登場人物達はこっけいで哀しくて愛おしい好き嫌いはわかれるかもですが少し覗いてみては如何でしょうか?
この小説の魅力は登場人物の壊れっぷりだと思います。主人公のレオナルドも悪魔のカラも大好きなのですが、小説を読み進めていくと、あれ? と思うのです。常識人の筈の人物が思いもよらない壊れ方をしていたり、壊れたのはレオナルドだけではなかった。もちろん、レオナルドも壊れていますが、様々な壊れた人物が登場するのが、この小説の魅力でもあると思います。レオナルドと敵対するような人物との駆け引き? がどうなっていくのか、とても楽しみにしています。この小説を読むには、ボーイズラブ要素もあるということで、好みが分かれると思いますが、是非とも読んで頂けたらいいなと思います。