評価:★★★★☆ 4.3
それは終戦の花鎮(はなしずめ)の祈り。「今に、わたくしが死んだら。鎮めの花と花と、この御国の土に、どうぞ埋めて下さいましね」大戦に引き裂かれた家族の絆。1945年終戦のハルピン。対ソ特務機関にいた密草葵は国境の絆に引き裂かれた二人の白系ロシア人の姉妹を想い、最期の決断をする。極東の夏の夜咲く、冬を忍ぶ花の名は。九藤朋さん主催、耽美コンテスト参加作品です。
話数:全2話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
人と人は決してきれぬ細い糸で繋がれているもので、それを『縁』と言う……そんなありふれた言葉など、心に響かぬのは、私達が平和という幻想にとらわれているからであろうか。時は、大東亜戦争の末期。主人公の青年は、姿をくらませた父に一人のソ連で生まれ育った少女の身を預けられる。彼女は心臓に病を抱えており、余命幾許もない身。そして彼女には生き別れになった双子の姉がいる。青年は決意する。少女の願いと、自分の想いを叶える為に……戦時中の切ない会者定離の物語。人は何故に生きるか。答えはただ一つであろう。『愛』であると……本作を読めばそう思わざるを得ない。消えてしまいそうな、儚い調べから始まり、最後は胸の内を叩き割らんとするほどの、激しい旋律で終わる。哀しい物語でありながらも、どこか心地よい余韻を残すのは、作者の繊細かつ大胆な文体ゆえと感心させられる秀作。