評価:★★★★☆ 4.4
時は現代ところは日本。高校生の衛介は、異界の門より現れいでたる妖怪に襲撃を受ける。そんな彼を救ったのは、「怪異ハンター」を職とするPIROという名の組織であった。はてさて紆余曲折を経て、彼も一人の狩人として悪神百鬼と戦うことに。燃えよバンカラ、はじけろコギャル。研ぎ澄まされし太刀を手に、衛介君と美少女たちが列島狭しと大暴れ!
(本作には実在の地名・歴史上実在した人物などが登場しますが、物語はフィクションであり、特定の個人や団体への中傷を目的とするものではありません。)
話数:全59話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
ーーさあさお立ち会い。御用とお急ぎのない方は、いやある方も、これを逃せば末代の損。錦心繍口、七歩之才、筆取る姿は今馬琴。稀代の伝奇小説家、狂枢亭交吉がその精髄、とくとご覧あれ!時は現代ところは日本、ごく普通の高校生・高砂衛介はひょんなことから妖怪騒ぎに巻き込まれ、転がり込んできた少女と共に妖怪ハンターとして……⁉︎大時代的な台詞回しは舞台背景によく映えて、筆者の豊富な語彙力と共に、生きた言葉を打ち立てる。地の文は思わず口遊むような講談調、それ自体を一個の芸術と呼ぶに不足はない。深く渦巻け陰謀論、偽史偽典こそ正史なれ。組んず解れつ怪獣決戦、思えばしなだる手弱女の肌。緻密な史料と考察、溜息の出る魅力的な人物群に裏付けられた、最強エンタメ伝奇譚、ここにあり。花も実もある珠玉の傑作、狂枢亭交吉が『アサルト・オン・ヤオヨロズ』、読まずに死ぬのは、ちと勿体無い。
本作の魅力はなんと言っても主人公の古風な語り口。古文めいた古めかしい語りでありながら不思議と読みやすいのです。現代日本を舞台にした伝奇バトルの世界を、独特な文体で語ることで魅力が何倍にもアップしています。主人公たちが退治しなければならないのはさまざまな妖怪変化なのですが、ひとつひとつ作者さんが調べ上げていることがうかがえるのも好印象。ぜひ、その怪異っぷりをご堪能ください。魅力と言えば、ヒロインたちのかわいさも光っています。私が特に好きなのは、若い女の子なのに「~のじゃ」としゃべる卜部凛です。作者さんの、のじゃ口調への愛がいっぱい感じられますね。もちろん、他の子もかわいいです。ファンアートがたくさんありますから、ぜひ見てください。ではでは。日常と怪異が交錯する狂枢亭ワールドをお楽しみあれ!
「初めまして、住吉千歳といいます、高校生ですあのですね、元カレが、バイト先で知り合ったんですよ。まあ顔もよかったし?後からヨリ戻そうってしつこくって そん時会ったのが高砂衛介。中学の時の同級生ですその時はやり過ごしたんですけど、家に送ってもらった時ですよ!元カレがトカゲに変身して!もう死ぬって思った時車が来て、中で武器渡されたんですよ。長いやつ、長巻?薙刀?なんとか撃退したーって次の日ですよ!家につけられてまた変身!やっつけたはいいんですけど、灯油かけて火点けるなんてしなきゃよかった……はあで、その衛介と一緒のアパートに住んでまして同棲!?違いますよ!なんで私が大喰らいでしゃべりが落語みたいな男と……同居です同居!ただでさえ妖怪退治しなきゃなんないのに、薄幸の美少女ってホント大変というわけで、私がメインヒロイン張ってますアサルト・オン・ヤオヨロズ、ぜひご覧くださいー!」
この物語がもし映像化されるとしたら、アニメや漫画よりもむしろ、歌舞伎の舞台がふさわしいかもしれない。現代に蘇った魑魅魍魎あいてに、ちょっと古臭い価値観の男が、ダンビラを片手に大暴れ、そんな話だからである。主人公のエイスケはとにかくやることなすことダサイ。考え方、仕草、まったくもって今風ではない。不器用を絵に描いたような男である。が、それがまた良い味を出している。とかくナヨナヨしてて、女の機嫌ばかりうかがう頼りない男がもてはやされる昨今。こんな硬派なキャラも時にはいいだろうと思う。
主人公:高砂衛介は思春期真っ盛りの普通の男子。しかしここぞで江戸っ子を思わせる、粋で、己の矜持を高く掲げる漢でもある。 イマドキでナマイキ(しかし実は結構家庭的)な美少女:住吉が見つけた勾玉を起因に、太古の匂い香る常世の怪異が現世へと浸食し始める。 さながら文明で練り上げた分厚い壁に入った小さなひびに、太い釘を打ちこんでいくかのように物語は進む。 与えられた武器は超常の力、されど強大な力に非ず。衛介、如何する? 語り口は近代文学を思わせる堅めの文体だが、読みづらいかといえば否。何よりもこの文章だからこそ豊かな民俗学の知識と怪奇共が引き立つ。『本当にいそうな思考回路の、溌剌として活き活きとした登場人物と、和の息吹濃き現代ファンタジー』 上記の要素が好きな方・興味のある方は、新たな扉への挑戦としても、是非この作品–「アサルト・オン・ヤオヨロズ」を読んでみてはいかがだろうか?
世の中には、絵心の無きゆえに原稿用紙を開く者が居る。 こうして御話しさせて頂いている男は、正に其の類である。 しかし本作は明確に違う。恐らく小説と言う様態でこそ、其の魅力を存分に発揮するものであろう。 韻と律を意識した言葉選びは、古文さながらとでも言うべきか。読んでいて心地良い。「文章を読むこと」其のものを楽しく思えるのは、中々如何して貴重なように思う。 やや難読の熟語こそ多いものの、字義と文脈で大体は理解できる。勿論、辞書を引くも良し。此れもまた「古文的」な楽しみ――とは幾らか阿った評価になろうか。 魅力的な登場人物。斬新な世界観。白熱の戦闘。躍動の活劇。此れらを綴る軽妙な語り口。 此の小説が面白いと言うに足る全てを備えている。 読めば魑魅魍魎を招くやも。 けれど高砂くんと愉快な仲間たちが居れば大丈夫。 いざやゆるゆる、御楽しみあれ――