転性のノスタルジア 完結日:2017年12月26日 作者:都森メメ 評価:★★★★☆ 4.2男として生きた前世の記憶を持つ女の子が、現代日本で幸せになろうと頑張ったり、昔を懐かしんだりするお話。 話数:全42話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 日常 転生 注意:TS なろうで小説を読む
この物語の内容は、「矛盾とどう向き合うか」ただそれだけにあると考える。覚悟もないまま過ぎてしまった人生とこれからやってくる明日の間で自分が何者かを問う、まさに思春期のようなものだ。変わりゆく自身の性を理性で捉えようとした、ただの失敗談だ。コメディのような面白みを求める層には残念ながら合わないかもしれない。しかし、しかしながら一つだけ傲慢に言わせてもらうとすれば、これは私の夢なんだ。覚めてしまった私にとっては毒にしかならない羨望なんだ。破いて捨ててしまった思い出なんだ。もし、この文章を読んだ人の中に少しでも未来への不安があるなら是非とも本編を読んでほしい。これは、未来に溢れる多感な君達の一つの指標となるだろう。
現代日本においてTSF(トランス・セクシュアル・フィクション)はアダルト・エンターテイメントを中心に流行し、それらの作品の目的は読者を性的に満足させることにある。 一方、本作の目的はそこにない。カタルシスである、と思う。 中学生編において転生と性転換を悲劇的に描く中で想起したのは、近頃やけに意識される「ジェンダー」に対して抱く小さな鬱屈であった。また、普遍的な「◯◯らしさ」に対する嫌悪感である。 大人と子供、男性と女性、友人と恋人、過去の自分と今の自分……、主人公・桜田美咲は様々な「◯◯らしさ」に縛られ、葛藤し、ある答えを導き出す。 その答えが提示される最終話は実に気持ち良い。なるほど、これは文学だ。 今、エンターテイメントに埋没する「TSF」から文学作品は生み出された。 レビューに代えて作者に賞賛を送ろう。