評価:★★★★★ 4.5
ブラインドを上げて窓を開くと、そこには紫陽花が朝露に艶やかだった。
梅雨の湿った空気が、店内に流れ込む。祖父の代から続く、住宅街の中の喫茶店。僕が継ぐと告げた時、病床の父は物言いたげな眼差しをこちらに向けながらも、反対はしなかった。
半地下構造の店舗。使い込まれたサイフォンが並ぶカウンターは残しながらも、僕は思い切ってテーブル席を撤去した。壁面に書棚を並べて、がらんとしたスペースにも浮き島の様に陳列棚を配した。
こうして、僕の店がスタートした……
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初出はエブリスタ。
三行から参加できる超・妄想コンテスト「本屋さん」参加作品です。
【短編 No.11】2017.6.27 初掲載
話数:全6話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
その他要素
注意:全年齢対象
自宅兼職場のマンションまで徒歩十分。両手には数日分の食料を詰め込んだ大きな買い物袋。そして、梅雨空模様にはお決まりの……雨。 やまない雨に辟易していた時、偶然、その喫茶店を見つけた。誘われるように中を窺うと、そこには素敵な書棚が設えられていて……。 貴方にピッタリの一冊、お探しします……と。 仕事上の閉塞感に囚われていた私に、1冊の本が差しだされた。 偶然の出逢いに始まり、必然の1冊が提示される。私の不安は払拭され……、やがて。 物語は静かに展開しながらも少しずつ移ろぐ。そんな時間の緩やかな流れが、とても心地いい。 波乱のない恋愛小説でも、これなら、読者の皆さまは納得されるのではないかな……。 波乱がない恋愛小説だから、この結末からは、幸せが予感されるんじゃないかな……。 とにかく素敵な物語だとわたしは思う。そして、おとなの恋の始まりに憧れる。