高校生四人が鬼ヶ島に迷い込んでしまった件の事後報告（聴取有り）

同じ高校ながら見ず知らずの4人が時空を超え、捕縛され鬼ヶ島に打ち棄てられる！敵か味方か、生か死か。頼りになるのは直感、体験、そして恐らく自分たちが好きでしていて、日頃から身についている趣味。受験もスマホも何も教えてはくれないのだから。現代人の弱さ強さを浮き彫りにしながら、そこに見えてくるのは紛れもない、生きるということ。見事な構成で容易く物語世界にトリップさせ、過不足なく綴られる心情を疑似体験するうちに、自分は4人のうち誰のタイプか考えたりもしてしまいます。あなたは鬼ヶ島をどう生きますか？

人物設定、情景設定、そして、描写力、構成力、オチの決め方。どこを取っても文句の付けようがありません。型通りの物語に飽きた方、もっと深い物語が読みたい方、人間のリアルすなわち光と闇を見たい方、どうぞこの物語を知ってください。そして、圧倒されてください。物語の主人公は同じ高校に通う、それまでお互いの存在を知りもしなかった４人の高校生。それぞれが別の場所、別の理由で命のピンチに見舞われます。「だめだ、死んだ、終わった」から始まる思いもかけない第２の人生。鬼の登場、そして彼らとの奇妙な共同生活。悩み、憎しみ、ねたみ、羨望、同情、そして、固い友情。彼らの経験の続く先にあるのはそれぞれの、未来。弱い彼らは強く、強く生きていく。読了後、彼らを応援したい気持ちを強く持ちました。珠玉の逸品。どうぞお手に取ってくださいませ。