評価:★★★★☆ 4.2
交通事故により、家族と、自らの記憶の大部分を失った柏木恵一。失われたものを探しもがく毎日の中で、担当の医師、さくらとの間にほのかな恋心が芽生え始める。満ち足りていく日々のその一方で、柏木は自分が無意識下で綴っている断片的な走り書きが、ことごとく未来を予測していることに気づく。記憶と引き換えに得たもの、それは未来予知の能力なのか? 逡巡する柏木の前に、その能力に感づき、利用しようと目論む不穏な影と、さくらを狙う恋敵の姿がちらつく。これは柏木が「本当の自分」を取り戻すまでの、青春群像劇。
話数:全63話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
真っ白な静謐を感じさせる部屋に僕は寝かされていた。こんにちはと優しく響く声は、僕の主治医のようだ。その人は僕が交通事故で重体となり、脳の状態を危惧していた、と言った。僕は名を聞かれて柏木恵一と名乗った。歳は25。そこだけは、自信を持って答えた。このお話はそんな冒頭から始まる物語。しかし事故から7日後に奇妙なことが起こるのです。病院内の中庭を散歩中に金木犀の香りをかいだとたん「僕」は昏倒し、次に目が覚めた時には、日記のような断片を左手で書いていた。そしてその断片は、予知夢のように現実でも起こったのです。読み進めるうちにミステリー小説を読んでいるかのような錯覚に陥りながら、主人公と共に不安やドキドキする気持ちを共有し、後半からは一気読みすること間違いなし。最終話を読んで冒頭を読むとまた、泣けてくる……そんな心を打つ希望に満ちた感動作をぜひあなたのお手元に!
推理ものとも言えるんじゃないかと思います。けれど、ドキドキ・ハラハラという訳ではありません。静けさ・儚さ・爽やかさ、これらに、ゆっくりとした不安感が織り込まれています。主人公の柏木恵一は事故で記憶喪失になり、病院に入院しています。担当の医師はさくらさんという女性。恵一は徐々にさくらさんに惹かれていきます。すると自分の体に不思議なことが起こり始めるのです。何故記憶を失ってしまったのか?この不思議な現象は一体何を意味するのか。そして、さくらさんとどうなっていくのか。読み終えたとき、きっと、心に優しい風が吹くと思います。
ジャンルはヒューマンドラマとなっていますが、読み進めると、えっ?!そうだったんだ!!と、まるで叙述トリックを読んでいるような爽快感を覚えました。タイトルの意味もラストできっちり明かされていて、素晴らしい作品だと思いました。命ははかないものだけれど、人1人の人生には、確かに深いドラマがある。誰しも皆、悩んだり苦しんだりしながら、毎日を一生懸命に努力して生きている。そんなメッセージに気づいた気がしました。私は途中、感動して本気で泣きました。
大胆な表現にして、繊細な描写。序盤から心拍数の高まる展開。それはもうあらすじから感じ取れます。登場人物一人一人の行動、主人公の心情が明快に描かれています。分類上は『ヒューマンドラマ』となっていますが、一言ではこの作品を言い表し切れませんと思います。是非万人の方々に読んでいただきたいです。現にありふれた青春物語ではありません。また一味違った青春の側面を垣間見る事ができるでしょう。