評価:★★★★★ 4.5
これは俺と少女の物語。儚げで優しく、健気で繊細な、胸がツルペッタンコで顔立ちの整っていない不幸な少女と、それを見守る勇敢な俺の物語だ。
それはまるで、雪山で遭難した小屋の中にたった一本だけ置かれていた芯の無い蝋燭や、火災現場で鍵の壊れた室内に取り残される様な、無価値な物語。
世話焼きな七人の小人も、池の中で木こりが落とす斧を待ち続けているバカな女神も、少女に微笑んではくれない。だから俺は、それでも俺は、少女の幸せを願い、探し続ける。
もしそれが鼻で笑われるような下らない平凡だとしても、盤石の平和を築く異世界に転生した男子高校生だとか、ツインテールの似合わない魔法少女を描く平凡な筋書きが待っていようとも、俺と少女には、声が嗄れる程の懇願を続け、血反吐を吹き散らしながら追い求める奇跡に近い。
最後に待つのは平凡か不幸か、ガラス片が散らばる道で素足か靴か、選択肢は少ない。それでもやはり、願い続ける他に選択は無い。
これは、俺と少女の物語。美しく華麗な少女と、無知で臆病な俺の物語。目を背けたくなる残酷な奇跡。そんな矛盾を生み出しているのかもしれない。
話数:全39話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
“森のボロ家に住む金髪貧乏少女(“”美””はつかない)親に無視され 祖母に貶され タチの悪い男に引っ掛かるシンデレラストーリーが始まりそうで 現実にはそう珍しいわけではない少女を幸せにしてくれる ただ安らかに生きていけるそんな奇跡は予兆すら影も形も見せやしない少女に奇跡は起こらない奇跡はただ一匹のみすぼらしいドブネズミに降り注ぐ些細な 本当に些細な奇跡これは世界一幸せなドブネズミのお話”
物語はドブネズミの視点から進む。1人の少女を見守っているのだが、その少女はお世辞にも美しいとは言えない不細工である。一見読者にとってなんの魅力も感じられなさそうだが(事実私もあらすじを見て読むのやめよっかな と思った。許せ)ドブネズミの視点から語られる少女への思いにより、ドブネズミへの感情移入という形で少女の動向を見守りたくなった。裕福ではないし、何か秀でている訳でもない少女が、苦労したり、ようやく幸せになってきたところで思いもよらぬ邪魔が入ったり……少女の笑顔が出るとホッとする。また、ドブネズミから少女へは言葉が通じないのがもどかしく、少しせつない。少女に関わる大人は汚い者が多く、イラッとすることもあるが優しい人が出てくるとちょっと安堵するのはやはり物語への没入だろう。時たまドブネズミらしい洒落をかましてくるが全体的に雰囲気は暗め。そういうのが好きな人は読んでもいいではないだろうか。