評価:★★★★☆ 4.1
【小説家になろう×スターツ出版文庫大賞 フリーテーマ部門賞 受賞作】
耳が不自由なことを言い訳に他人と距離を置きたがる少年・吉澤詠斗は、高校二年生になった春、聴こえないはずの声を耳にする。
その声の主は、春休み中に亡くなった一学年上の先輩・羽場美由紀だった――。詠斗にだけ聴こえる死者・美由紀の声。美由紀は詠斗に、自分を殺した犯人を見つけてほしいと懇願する。現在、美由紀を殺した容疑が無実の人間にかかっているというのだ。
声が聴こえることにこの上ない喜びを覚えた詠斗は、どうにかして美由紀の願いを叶えてやろうと奔走する。
刑事の兄、中学時代からの同級生、そして、かけがえのない幼馴染の少女――。
周りの協力を得ながら、詠斗は美由紀の死の真相に迫る。人と人とのつながり、相手を思いやる気持ち――捜査の過程で大切なことに気付いていく、ファンタジック青春ミステリー。
話数:全25話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
青春の真っ只中、なぜか自分の気持ちに正直になれなかったり、他人との距離をうっとうしく感じる時期がある。そんな少年の等身大の心境が描かれる本作は、どこか自分を省みるようで恥ずかしさもあり、一方で、音なき世界で助けを求める先輩を、何とかしてあげたいという正義感が眩しく、爽やかな語り口と相まって、これぞ『青春ミステリー』と呼ぶにふさわしい。連続殺人事件の真相解明に向けて主人公の元に集う協力者たちはどこか強く、優しい人々ばかり。そんな絆の力が、ひとつの真相に向かい、犯罪に立ち向かうシーンには胸を打たれる。ハンディキャップの有無に関わらず、人は一人では生きられない、むしろ自ら手を差しのべていく存在でありたいと願う気持ちが重要なのだと、読んでいるうちにいつしか主人公と共に成長をした気持ちになれる一作。