評価:★★★★☆ 4.1
第五次世界大戦により生存可能域がヨーロッパのみに狭まってしまった世界。
そんな中でも、平穏を壊すために暗躍する組織がある。家族、地位、財産、名前――それまで積み上げてきたものを彼らに奪われた男、ジョエレは、復讐のためだけに生きてきた。
奇襲、敵前逃亡、騙し討ち。目的を達するためなら手段は選ばず、時には危険物さえ撒き散らす。良心や良識? んなもんドブに投げ棄てろ。
話数:全183話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
第五次世界大戦後の、ヨーロッパ。そこには依頼を受けたら何でもする男、ジョエレがいる。人探しでも旅先案内人でも。女好きでだらしない、飄々とした人物。それはあくまで表の顔。裏では暗殺や、トクベツな品物の取引もする。彼はなんのためにそんなことをしているのか。読み進めていくと徐々に謎が紐解かれる。ジョエレと共に表の仕事をするのは、少女ルチア、スラムで拾われた少年テオフィロ。三人のやり取りはコミカルで、彼らが本当にそこにいて生活しているかのように人間味に溢れている。その穏やかな日常にも少しずつ裏の仕事にまつわる影が潜んでいてジョエレの謎を知りたいと言う思いだけでなく、彼らの生活の先に何があるのかも知りたくなる。これは一度読み始めたらどっぷり世界に浸っちゃう、そんなあじわい深い名作です。
SFとは一体何なのだろうか。「Science Fiction(空想科学)」? 「Space Fantasy(宇宙幻想)」? それとも「少し・不思議」? この作品は「壮絶」で「Sublime(崇高)」で、「不幸せ」と隣り合わせであり、だからこそ読み終えた時に読者は「Felicita(幸せ)」の意味を知るだろう。第五次世界大戦により、生存可能域がヨーロッパに限定された世界。それがこの作品の舞台である。すべてを失った男は、暗躍する組織への復讐を誓い生きてきた。果たして復讐を遂げた先には何があるのだろうか。男の見る夢はほろ苦く、寂しく、甘く、そしてただ愛おしい。プロローグとエピローグのない構成は、読者を翻弄する。一気に荒れ狂う大波の中に放り込まれ、気がつけば嵐が過ぎ去り、波打ち際に打ち上げられるだろう。そして私たちはじっと考えるのだ。生きることの意味とその重さを。
将来の目標があって、一緒に頑張る仲間がいて、ときには悪ノリしたりなんかして。幸せな時がすぎて、目標は現実になって、いつしか隣には愛しい人が居て……。その光景がずっと続けば、どんなに良かったろうか。ある日突然に何もかも無くなって、残ったのは絶望と虚無。それでも生かされてしまったのなら。生きなければならないのなら。失ったものと共に歩もう。決して明るい道ではなくとも。*人の運命とはかくも残酷なものなのでしょうか。登場人物達はみんなそれぞれ影を背負い、どこか薄暗いものを纏います。それは彼らの過去故であり、年齢を重ねてきたからこその深みです。人生経験を積んできた大人にこそ読んでほしい。随所に散りばめられた伏線や、皮肉な台詞に潜む感情。それらを読み解き、感じたときに得るカタルシスを体験してください。※バトルシーンとか厨二っぽい武器も出るんで若い人が読んでもおもしろいよ!