評価:★★★★★ 4.5
ベッドに近づくと、すうすうと寝息を立てて眠っているムイを見る。
(お前は……アランのような優しい男が、好きなんだろうな)
そう思った瞬間、心が冷えていくような気がして、胸が絞られた。
(当たり前だ、俺はお前に酷いことばかり……けれど、)
「……俺を、嫌わないで欲しい」
いつの間に、そう声に出ていて、自分でもぎょっとした。
踵を返して、慌てて部屋を出る。ドアの前で、高鳴った胸を鎮めるようにして、深く息を吸った。
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『名を握る領主』として有名なリンデンバウム城の領主リューンは、従者の真の名前を握って飲み込むことで、その者を支配できるという力を持っている。けれど、命令通り思い通りになるこの城の生活の中、リューンは城の従者を縛るその力を忌み嫌い、疎外感や孤独に耐えながら暮らしていた。ある日、男が少女を連れ少女を侍女として雇って欲しいと言う。少女は名無しで、リューンの名を握る力の及ばない、初めての人間だった。少女はムイと名付けられ、食事の後片付け係として雇われたが、ムイにはもう一つの秘密があった。
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両片想いで純愛、胸の痛むような切ない恋というものを目指しましたが。。ブックマークや評価をありがとうございます。感謝の気持ちが、届きますように。
話数:全37話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象