評価:★★★★☆ 4.1
――ある日、何の前触れもなくクラス全員の財布が盗まれた。
「管理はどうなってんだよ!」「お前が盗んだんじゃねぇのか!?」「そういうテメェはどうなんだ!」
怒号が飛び交い、お互いがお互い疑心暗鬼に陥る教室。
学力が全てであり、イジメの横行する淀んだ進学校で起きた大胆な盗難事件はやがて、杜撰な管理の責任の押し付け合い、苛烈な犯人探し、容疑者に対する陰湿なイジメに発展していく。誰が? どうやって? なぜ目立つにも関わらずクラス全員のサイフを盗んだのか?
財布の管理に携わった木戸は自身の大切な人の為に、表沙汰になるタイムリミット二日の間に犯人を捜し、一人財布の奪還を試みるのだが――それはこのクラスの誰がための破滅/救済への第一歩であった。
――――――――――――――――――――
全23話完結済み。一時間くらいで読める読切り学園ミステリーです。十代の頃にライトノベル研究所で別名義で書いた、文庫一冊分の長編処女作品です。
Why done it?(なぜそんなことをしたのか?)という動機に重点を置いた青春ハードボイルドとも、青春ミステリーとも、青春サスペンスともつかぬお話。中身はなろうの主流からことごとく外れており、ひたすらシリアスです。コメディ要素ゼロ。ヘイト多め。形はミステリですが個人的にはハードボイルドの亜種だと思っています。
またもう一つ投降している拙作「宿屋の倅」とは180度方向性が異なりますので、あちらの様な話を期待された方はきついかもしれません。それでも読んで頂ける方がいれば、暇潰しでも構いませんのでどうか宜しくお願い致します。
話数:全23話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
タイトル、あらすじで強調されているように、リアリズム溢れる学園サスペンスです。『イジメ』が横行する教室という、陰鬱かつ普遍的な舞台。ここだけですと、リアルで生臭い『だけ』のブンガク作品かと思われそうですが、さにあらず。イジメの恐怖と屈辱に心が折れる寸前で、大事な人のために立ち上がる主人公はまさに、『かつてイジメに屈した/見て見ぬふりした』読者が『こうありたい』と願った姿。こうした主人公は確かにフィクションでしかありえないのですが、『等身大の高校生』という設定を忠実に護っているため嫌味はありません。このバランスは実に素晴らしい。そんな主人公が最後に辿り着いた真実は、やっぱり現実でしかありませんでした。しかし読者(私)の心に残るのは『所詮現実なんてこんなもん』という虚しさ……だけではなく、主人公の戦いそのものから得た感動でした。がっつり心に喝を入れたい方におすすめします。