雨の奏でる時間 完結日:2010年11月12日 作者:秋野みか 評価:★★★★☆ 4 私(ケイ)は、雨の日に出会った不思議な男性と恋に落ちる。 相手(ミミ)を理解しようとする中で、病気は理解が出来ても、同 性愛という部分で心に葛藤が起きてしまう。 やがて、どういう形がお互いを一番幸せに出来るかを考えた時に、答えが出て来た。 話数:全12話 ジャンル:その他 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 GID フランス 同性愛 注意:R15 なろうで小説を読む
複雑な事情を抱えた恋人と誠実に向かい合おうとするある女性の物語。 むずかしい題材を扱っているのですが、 ――ミミの話を聞き、自分の心と照らし合わせるようにして考えていると、少しずついろいろなことが見えてくる気がした。 というヒロインの姿勢にも現れているように、心理を冷静かつ丹念に描写しているので、小説全体の雰囲気はごく落ち着いたものになっています。恋人の天真爛漫なキャラクターが、せつないなかにも明るい雰囲気を醸しています。 さて、たがいを受け容れようとつとめたふたりの出した答えは……。 素敵な小説。おすすめです。
この小説の読み方として、2つの面を挙げてみたい。1つは、心理小説としての面白さである。サブテーマであるGIDが興味本位的に描かれていない点がいい。しつこくもなく、どろどろしてもいない。フランスの心理小説を思わせる乾いた筆致に、拍手を送りたい。もう1つは、情報小説としての読み方である。著者の秋野みか氏は、長く欧州に在住されている方だという。確かに、ヨーロッパでの生活にまつわるディテールの数々が作りものめいていない。さらりと作品に織り込まれている。欧州と日本との間にあるさまざまな面での相違や、観光しただけでは知り得ない欧州での生活ぶり、そして人間関係の機微を描く――。これこそが秋野氏の紡ぐ作品たちの真骨頂であろう。ヨーロッパでの生活について深く知りたい人がいれば、私は躊躇することなく、秋野みか氏の小説を読むようにと勧める。