評価:★★★★☆ 4.3
「生きる目的がない――」
そんな漠然とした理由で死にたがっていた無職の男・成(なる)は、駅のホームから飛び降りようとしていた風俗嬢の渚に出会う。
話を聞くと、渚は小説家を目指していて、作品のために自殺志願者の気持ちに近づこうとしていたと言った。
渚のことが気になった成は、自分が自殺して見せることを提案してしまう。
やがて、成と渚はキオ、ミチコ、ケイトという自殺志願者達と出会い、五人で人生最後の旅行に行くことにした。
行き先は自殺の名所ばかり、そして成の二十六歳の誕生日に富士の樹海へと辿り着く――。
最初は渚のために死ぬつもりの成だったが、仲間達の過去や渚の真の目的を知っていくうちに……。……すべてが嫌になったり、「消えたいなー」って思ったりすることは誰もが一度は経験あるかと思います。
主人公もその程度の気持ちでしたが、数奇な出会いによって「その先」へ足を踏み出してしまいます。一見すると暗いテーマですが、読み終わったあとは前向きな気持ちになれる、そんな物語です。
※「カクヨム」「アルファポリス(外部リンク登録)」にも掲載していますが、収益は受けていません。
話数:全33話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
人が死を意識する瞬間。つらいことに直面したとき、生きる意味や目標を見いだせないとき等人それぞれにあるでしょう。この小説はそんな、死を意識する人々の話です。それぞれに死を意識する理由があって、これまでの人生もある。彼らが作中で繰り広げる人間ドラマと、その結末をぜひ見届けてほしいのです。今、苦労していない人も。人生の意味を見失っている人も。これは生きることと死ぬことを考える物語ですから。
自殺を良いことと考えている人間はほとんどおりません。自殺をテーマにした物語は、必ず暗い雰囲気になってしまいます。では、自殺は本当に悪いことなのでしょうか。自殺は、本当に悪いだけのことでしかないのでしょうか。人は生きている以上、必ず死にます。死ぬことは仕方なくて、自殺は悪い。それは、あまりにも矛盾していることだと気が付くべきです。人生は、死ぬ瞬間までが人生です。なら、自殺だってその人の人生です。人の人生は、決して他人に否定されるものではありません。自殺は人生を変えます。それは自分の人生かもしれませんし、他人の人生かもしれません。自殺をただ悪いことだと決め付けず、まずはこの物語を読んでもらいたいです。
なろうというものは共感の文化だという論評がある。ブラック企業に使い捨てられた社畜が異世界でうんたらかんたらという定型文、あれはある種の自殺願望の様に私は感じていた。その自殺願望をこれでもかと突き詰め、およそ抜かりないほどに完璧な形で成立させた結晶の様な物語だ。正直な感想を述べると読み進める度に胃酸がヘドロのように湧きだし、死に向かっているにも関わらず明るくそして儚く振る舞う渚や、目の前で死に触れて揺らぐ成にどうしようもない苛立ちを覚えた。それが同属嫌悪に近い感情だと自覚しながら。あまりレビューに書く内容では無いと自覚しているが、この物語を読んで私は初めて「共感」したと思う。人生の虚無感の在処、死に対する裏返しの生への感情。求める回答はここにあったと、そう作者様に感謝の意を評したいと思う。
「自殺」。この言葉を聞いてよいイメージを思い浮かべる人はまず、いないでしょう。思い浮かぶのは全く対極にある悪、あるいは暗いイメージです。にもかかわらず、本作の自殺の話は何故か「とても明るい」のです。しかし、それは「死が全てを解決してくれる」といった哲学的な話では終わりません。いや、厳密に言うと「徐々に明るくなっていく」といった感じでしょうか。当然ですが、自殺は暗いものです。そして本作に登場する「自殺志願者」にも、それにふさわしい(と思われる)理由が存在します。にもかかわらずなぜ、本作の自殺は「明るい」。あるいは「明るくなっていく」のかといいますと・・・結末を知りたい方は実際に読んでみてください。あまり書きすぎるとネタバレになってしまうのでこの辺で。
≪どうせ死ぬなら野良猫を助けようとして車に轢かれる方がまだマシだ。それも、できれば白黒のブチ猫がいい≫何かに絶望した訳でもなく、ただただ漠然とした『停滞』『終わった物語のエピローグ感』に死を思う青年、奥中成。元より自殺をするつもりなどサラサラない。なかった。彼女が自殺に関する小説を書きたいと思っていたから?妙な縁を感じてしまった彼女との繋がりを手放したくなかったから?真意はわからない。それでも、口をついて出た言葉は≪「俺が自殺しようか?」≫であった。友情でもなく恋でもなく、奇妙な縁で繋がれた関係は、つまらなくてくだらなくて惰性染みた白黒の日々に色を付けていくように。下手でベタなドラマなんかよりもずっとドラマティックに『自殺』というネガティブな要素をドラスティックに描いた作品です。一言だけ……読むなら、絶対、最後まで読みなされ!!
これといった特徴のない主人公の成(なる)落伍者として平坦な人生を送っていた彼は、風俗でたまたま見つけた容姿端麗な女、渚(なぎさ)と出会う。渚は小説家を目指していた。内容は自殺をテーマとしたものにすると聞いた成は、目的もなく生きながらえている自身の人生を渚のために終わらせることに決める。それなりの時間を要し具体的な方法や日程について計画を練っていると、渚のいやに明るい言葉や表情が自殺決行するという実感を湧かせない。全てが煮え切らないまま時は過ぎていく。すると渚はある大それた計画を思いつき、ついに物語は大きく動き出す。あなたは、衝撃の展開の目撃者になる。
時に人は死にたくなる。それを否定する人はあまりいないだろう。そんな一人が死の旅に出ることになる。しかも行きずりの怪しげな女とその知り合いという一行とともに。それぞれ死を願いつつそれでも死と向かい合うのをためらうかのようにむなしく雑談を続け、身の上話に花を咲かせながら死についてそれぞれに考えを巡らしている。そんな死と生の物語です。